少しでも食費を抑えるため、安くてボリュームをかさ増しできる「もやし」を食卓に取り入れる人も多いでしょう。しかし、「もやしは安いけど栄養はないから、高くても他の野菜を買った方がいい」という話もよく聞きます。そこで今回は、「もやしに栄養はない」のは本当かについてお話ししていきます。
もやしにも栄養はある!?
白くてひょろっとしたもやしは、一見すると弱々しく見える野菜で、そこから「もやしっ子」という表現も生まれています。
実際に、もやしの成分は100g中約92~95%が水分で、5~8%しか栄養素は含まれていません(「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」)。その点から見れば、もやしはあまり栄養のない野菜とも言えるかもしれません。
しかし、「もやしには全く栄養がない」というわけではありません。もやしには、下記のような健康に欠かせない栄養素も含まれていることがわかっています。
- カルシウム
- 骨や歯などを作る栄養素。
- カリウム
- 細胞を正常に保つ、血圧を調整するなど、体内を良い状態に保つサポートをする栄養素。血圧を下げる作用もあるとされ、カリウムの摂取量を増やすと、血圧の低下や脳卒中予防、骨密度の増加につながることが期待される。
- ビタミンB1
- 糖質からエネルギーを作り出し、皮膚や粘膜の健康維持を助ける作用のある水溶性ビタミン。糖質を栄養源として使う、脳神経系の働きの正常化にも関係するとされる。
- ビタミンC
- コラーゲンを作り、皮膚や粘膜の健康を維持するのに必要な水溶性ビタミン。病気への抵抗力を上げる、鉄分の吸収を助ける他に、抗酸化作用もあることから、動脈硬化や心疾患の予防効果も期待される。
- アスパラギン酸
- エネルギー源として最も利用される、アミノ酸の一種。代謝を高め、疲労を和らげる作用があるとされる。
- 食物繊維
- 人の消化酵素では消化できない、食べ物の中の成分。便の量を増やして便秘を予防する作用がある他、近年では心筋梗塞や糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防に役立つこともわかってきている。
- 葉酸
- たんぱく質や細胞を作るのに必要な、DNA等の「核酸」を合成する水溶性ビタミン。赤血球の細胞の形成をサポートする作用があるため、細胞分裂が活発な胎児の正常な発育に役立つ点で、妊娠初期の女性は摂取が推奨される。
もやしの種類によって栄養価は異なる
もやしには、カリウムやカルシウム、ビタミン、アスパラギン酸などの栄養素が含まれています。ただし、もやしの品種によって栄養素は大きく異なることも知っておきましょう。
もやしの代表的な品種は、下記の3種類です。
- 大豆もやし
- 豆が付いたままのもやし。ナムルなどによく使われる。
- 緑豆もやし
- 国内では最も流通量の多い、やや太めのもやし。水分が多くシャキシャキとした食感が特徴。
- ブラックマッペもやし
- いわゆる「細もやし」。細めでサッと火が通るのが特徴。関西では人気が高く、焼きそばやお好み焼き向きだが、流通量は最も少ない。
この3種類のもやしのうち、スーパーで一般的によく見かけるのが「緑豆もやし」です。しかし各栄養素の含有量としては、緑豆もやしやブラックマッペもやしよりも「大豆もやし」が全体的に優れています。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」をもとに、もやしの種類ごとに栄養素を比較した表は下記の通りです(「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」)。
大豆もやし | 緑豆もやし | ブラックマッペもやし | |
---|---|---|---|
カリウム | 160mg | 69mg | 71mg |
カルシウム | 23mg | 10mg | 15mg |
ビタミンB1 | 0.09mg | 0.04mg | 0.04mg |
ビタミンC | 5mg | 8mg | 11mg |
葉酸 | 85μg | 41μg | 42μg |
食物繊維総量 | 2.3g | 1.3g | 1.4g |
アスパラギン酸 | 890mg | 460mg | 440mg |
(※いずれも生で、可食部100g当たりのデータ)。
ビタミンCは、大豆もやしより緑豆・ブラックマッペもやしの方が含有量が多いですが、その他の栄養素の含有量は、いずれも大豆もやしが突出しています。
スーパーで見かけやすく低価格な緑豆もやしと比べ、大豆もやしは少し高めの価格ですが、栄養価を重視するのであれば大豆もやしを選ぶのがオススメです。
もやしの栄養価を他の野菜と比べると・・・
もやしの中では、大豆もやしが総合的な栄養価では優れていますが、他の野菜と比べると栄養豊富だとは言いにくいです。
例えば生の小松菜は、可食部100g当たりにカリウム500mg、カルシウム170mg、ビタミンC39mg、葉酸110μgと大豆もやしより高い栄養価を誇っています(「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」)。
もやしはコストパフォーマンス面では優れた野菜ですが、しっかり栄養を摂るためには、他の野菜も食べることが大切です。
おわりに:もやしを買うときは、種類や栄養価にも注目を!
一括りに「もやし」と言っても、もやしには複数の種類があります。もやしは他の野菜より低価格で買えるのが大きなメリットですが、栄養価のことも考えてもやしの種類を選んだり、他の野菜も食べたりして不足しがちな栄養素を補うようにしましょう。
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