掃除や洗い物をするとき、ついたばかりの汚れや水溶性の汚れなどはちょっと洗ったり水で流したり、軽く拭き取ったりするだけで落とせますが、長い間こびりついた汚れや焦げついた汚れは単に洗剤でこすっただけでは落ちないこともあります。
こうした頑固な汚れには、クレンザーを使って削り落とすのがおすすめです。今回はそんなクレンザーの特徴や種類、使い分け方についてご紹介します。
クレンザーってどんな洗剤?
クレンザーとは、ケイ酸鉱物などの「研磨剤成分」を含む洗剤の総称です。汚れを浮かせて落としやすくする「界面活性剤」と、汚れを削り落とす「研磨剤」を含むため、サビや焦げつきなど、水や油に溶けない汚れを落とすのに向いています。このため、主に食器や金属器などの用具や、キッチンシンク、風呂場など水回りの掃除に使われます。
消費者庁の提供する「雑貨工業品品質表示規程」によれば、クレンザーは「研磨材及び界面活性剤その他の添加剤から成り、主として研磨の用に供せられる(つや出しの用に供せられるものを除く)」「台所用、住宅用又は家具用の磨き剤」と定義されています。また、漂白剤成分を含む場合は「漂白剤」表記が義務づけられていますので、クレンザーと表記されていれば漂白剤成分を含みません。
クレンザーは商品によって研磨剤の配合量が変わり、研磨材の割合が多いほど汚れを削り落とす力が強力です。研磨剤の割合は容器に記載されていますので、購入前に必ず確認しましょう。なお、「家庭用用品品質表示法」の適用対象でもありますので、クレンザーであることを伏せたまま商品販売されることはありません。
一般的なクレンザーは、弱アルカリ性の液性を持っています。これは、家庭汚れの多くが酸性であり、弱アルカリ性のクレンザーと中和することで落としやすくなるからです。
クレンザーの形状は3タイプあるの?
クレンザーの形状は、大きく分けて3つのタイプがあります。「ペースト」「パウダー」「クリーム」の3タイプで、それぞれ使用用途が異なり、間違って使うとクレンザーをつけた場所を傷つけてしまうこともあります。使い分けの際は、十分注意して使いましょう。
- ペーストタイプ
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- 粘り気があるので液だれせず、研磨剤の配合量は45%くらいで適度な洗浄力があり、さまざまな用途に使える
- 固まっても、水を入れて1日ほど置いておくと水分が馴染んで柔らかくなる
- 長期間放置していてカチカチになってしまったという場合は、水を入れて置いておく
- パウダータイプ
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- 成分中の研磨剤の割合が90%と高く、粒子が粗く洗浄力が高いことから、頑固なサビやお焦げつきに向いている
- 研磨剤が多いので表面を傷つけやすく、掃除の際は素材や力加減に注意が必要
- 粉が飛び散りやすいため、使用の際にはマスクを着用すると安心
- クリームタイプ
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- 白濁したクリーム状のクレンザーで、伸びがよく粒子が細かく、デリケートな素材にも使いやすい
- クレンザーで素材が傷つくのが怖い場合は、まずクリームタイプから試すとよい
クレンザーを使って掃除をするときは、基本的にブラシ類を使うか、クレンザー洗い専用のスポンジを用意しましょう。スポンジ類を使うと研磨剤成分がスポンジの奥に入り込んでしまい、完全に取り除くのが大変になってしまうからです。研磨剤成分を十分取り除かないまま、そのスポンジで他の洗剤を使ってしまうと、次に洗ったものを傷つけてしまうかもしれません。
クレンザーはどうやって使い分けたらいいの?
では、上記の3種類のクレンザーはどのように使い分ければよいのでしょうか。日常的によく使われる場面を4つご紹介します。
- 鏡やシンクの水アカ
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- 水アカには、しっかり吸着するペーストタイプのクレンザーを使う
- 水道水に含まれるミネラル、皮脂、石鹸カスなどがくっついたお風呂場や洗面所、シンクなどの水アカは、普通の洗剤では落ちにくい非常に頑固な汚れ
- 布やラップにクレンザーをつけて水アカを撫でるように洗い、クレンザーが馴染んでザラザラ感がなくなったら水で洗い流す
- コンロの焦げつき
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- 焦げがこびりついたコンロや鍋底の焦げつきには、研磨力の高いパウダータイプを
- お湯につけて焦げつきをふやかし、直接クレンザーをふりかけ、ブラシでこする
- 必要以上に研磨するのを防ぐため、一気に汚れを落とすのではなく、繰り返し優しくこすって徐々に落とすのがポイント
- 靴の泥汚れ
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- 泥だらけの白い運動靴や汚れきった上履きには、クリームクレンザーを使う
- 流水で表面の汚れを落とし、全体を湿らせた後に、クリームクレンザーをつけて靴ブラシでこする
- わざわざ靴用の洗剤を買わなくても済むため、経済的
- スイッチプレートの手アカ
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- プラスチック製のスイッチプレートは、研磨剤の配合量が少ないクリームタイプで
- 水で湿らせてよく絞った布に少量のクリームクレンザーをつけて優しく磨き、最後に水拭きをする
上記でご紹介したのは一般的な使用方法ですが、汚れがついた箇所の素材や加工方法によってはクレンザーが使えないこともあります。不安な場合は、説明書などをしっかり確認してから使いましょう。
クレンザーを使うときの注意点は?
上記のように、さまざまな家庭汚れに使いやすいクレンザーですが、そもそもクレンザーを使えない素材もあります。それは「木、素焼きのタイル」「貴金属製品」「人工大理石」の3つです。これらはなぜクレンザーを使ってはいけないのでしょうか。
- 木、素焼きのタイル
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- 木や素焼きタイルなどは、水が染み込んでしまう素材のため、クレンザーも染み込んでしまう
- クレンザー自体が水で流しきれず残ってしまうため、使わない
- 貴金属製品
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- クレンザーに含まれる研磨剤は、貴金属を傷つけてしまうことがある
- 傷をつけてしまっては大変なので、クレンザーは使わない
- 人工大理石
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- クレンザーで傷がついたり、光沢がなくなったりする恐れがあるため、使わない
このように、クレンザーが内部に入り込んでしまうもの、クレンザーの研磨剤によって傷がつくと取り返しがつかないものについては、クレンザーを使ってはいけません。また、クレンザーを安全に使うために、使う際には以下のようなポイントにも注意しましょう。
- ゴム手袋をつける
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- クレンザーは弱アルカリ性なので、油汚れに強く手指の皮脂も洗い流してしまう
- 肌荒れを防ぐためにも、必ずゴム手袋をつけて使う
- スポンジに直接つけて使わない
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- 普通の洗剤と同じようにスポンジにクレンザーをつけて使うと、スポンジ内部にクレンザーが染み込んでしまい、うまく研磨できない
- 使用後はスポンジをしっかり洗ったつもりでも内部に研磨剤が残るため、そのスポンジを食器などの洗いに使い回すと、お皿や鍋を傷つけてしまう
- クレンザーをスポンジで使うときはラップやビニールで包んで直接クレンザーをつけないようにするとともに、クレンザーに使ったスポンジを使い回さないことが重要
- ゴシゴシ洗いをしない
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- 研磨剤の配合量が少ないクリームクレンザーでも、ゴシゴシ力を入れると傷がつく
- 一箇所を集中的に磨くと汚れ落ちがムラになってしまうため、円を描くように優しく磨く
- 時々、角度を変えたり光を当てたりして、傷がついていないか確認する
- ラップにつけて優しく洗う
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- 傷つきやすい素材を掃除するときは、指にラップを巻いて磨く
- 力加減がしやすく、くぼみなども洗いやすい
- スポンジや布と異なり、クレンザーを吸収しないことから、少量でもしっかり磨けるメリットも
クレンザーは研磨剤などの細かい成分がスポンジの隙間に入り込んでしまいやすいので、クレンザー用に使ったスポンジを使い回さないことや、スポンジに直接クレンザーをかけて使わないことが重要です。また、汚れを落とすときには円を描くように優しく磨き、傷がついていないか確認しながら少しずつ洗い進めていきましょう。
おわりに:クレンザーで汚れを削り落とすときは、優しくていねいに
クレンザーとは、界面活性剤を主な洗浄成分とする洗剤に、研磨材であるケイ酸鉱物などを加えたもので、この研磨材によって汚れを削り落とすことができます。研磨材の配合率の違いによってパウダー・ペースト・クリームの3タイプがあります。
研磨材が多い方が削り落とす力は強いですが、その分素材を傷めやすいです。ですから、まず優しくていねいに洗うことを心がけ、最初はクリームタイプから使っていくのが良いでしょう。
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