一口にさびと言っても、その種類はさまざまです。よく想像されるのは鉄棒やアスレチックなどにつく赤さびで、赤さびは鉄の内部をぼろぼろにするものですが、中には内部を守るさびなどもあり、その種類も特徴もさまざまです。
さび取りをするときは、このような取ってはいけないさびに注意する必要があります。取ってはいけないさびの種類や、さび取りの基本的なやり方、予防対策を確認しましょう。
さびの種類のなかには取ってはいけないものもある?
さびとは、金属が酸素や水に触れて化学反応を起こし、別の物質へと変化したものです。金属にさびが発生すると、表面が剥がれたり見た目が悪くなったりするほか、耐久性が落ちて壊れやすくなることもあります。このように空気中でできる代表的なさびには、鉄の赤さび・銅の青さびなどがあります。
鉄の赤さびは最も身近なもので、鉄の表面が水や空気に触れ、自然と酸化されてできるさびです。アスレチックや鉄棒などにできる赤さびはよく見られますが、こうしたむき出しの鉄だけにできるとは限らず、コーティングされた鉄のフェンスなどにもごく小さな隙間やキズから発生することがあり、腐食が進むと鉄をボロボロに破壊し、風化させてしまいます。
銅の青錆とは、銅や銅合金に発生する青緑色のさびのことで、身近なものでは10円玉や銅でできたお寺の屋根、大仏などの銅製の建造物によく見られます。緑青は有毒であるという説もありましたが、現在では否定されていますので、もし銅鍋に緑青が生じた場合はきれいに落とせば使えます。また、緑青は見た目の色を変化させるものの、内部の銅を腐食から守る保護膜の役割もしています。
このように保護膜を作るさびとして、鉄の黒さびなども挙げられます。赤さびや青さびが空気中で自然に発生するのに対し、鉄の黒さびは鉄を高温に熱することなどで人工的に作られます。南部鉄器や中華鍋などが黒いのは、この黒さびによるもので、赤さびが発生して壊れやすくなるのを防いでいます。
つまり、さびの中でも「黒さび」は人工的に赤さび防止のためにつけられているものですから、取る必要はありません。むしろ、取ってしまうと赤さびの発生につながり、壊れやすくなってしまいます。取る必要のあるさびは、主に赤さびと青さびの2種類と覚えておきましょう。
さび取りのやり方と必要なものとは?
前述のように黒さびを取る必要はなく、取るべきなのは赤さびと青さびの2種類です。これらのさびは金属の表面に付着しているだけの別の物質ですから、削り落としたり溶かし落としたりできます。金属製のワイヤーブラシ、または専用のさび取り剤や重曹、歯磨き粉、クエン酸やお酢、酸性洗剤などを使って落としましょう。
- 金属製のワイヤーブラシ
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- 軽微な赤さびであれば、ワイヤーブラシで擦るだけで削り落とせる
- ワイヤーブラシで落ちないガンコな赤さびは、さび取り剤を含ませた柔らかい布で磨き、最後にキレイな布でもう一度拭く
- 重曹
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- 柔らかめの研磨剤として、金属表面に深い傷をつけないようにさびを落とせる
- 重曹と水を2:1の割合で混ぜたペーストを作り、さびに塗り込む
- 30分以上放置してさびをふやかした後、歯ブラシなどで擦り落とし、水で流す
- 歯磨き粉
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- 研磨剤がさびを削り落として金属をピカピカに輝かせるため、でき始めの軽いさびにおすすめ
- 不要になった歯ブラシに歯磨き粉をつけ、さびた部分を擦り、水で洗い流すだけ
- クエン酸、お酢
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- 酸性の力を持つこれらの洗浄剤は、さびた金属から酸素を切り離す「還元」の作用がある
- 軽い青さびには、お酢と塩が1:1の割合になるように混ぜた液体に浸け込み、さびが落ちたら取り出すのが効果的
- 水に溶いて作ったクエン酸水を雑巾やキッチンペーパーなどに含ませてさびを覆い、しばらく経ってからブラシで擦り落とすのもおすすめ
- 最後に洗い流したり真水で濡らした雑巾で拭き取ったりすれば終了
- 酸性洗剤
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- トイレ用洗剤などによくある酸性洗剤も、「還元」の作用がある
- 水道の蛇口の青さびは、専用の酸性洗剤を塗り込んで10分放置し、少し硬めのスポンジで擦り落とす
- 酸性溶液が残っていると新しいさびの原因になるため、さび取り後はしっかり洗い流す
このように、軽微なさびなら金属製のワイヤーブラシや重曹、歯磨き粉などで削り落とし、ガンコなさびはクエン酸やお酢、酸性洗剤などの「還元」の作用を使って溶かし落としましょう。また、さび取りの際に気をつけるべき注意点は、以下のようなことです。
- 赤さび取りのワイヤーブラシは、素材によって用途を変える
- 青さびに使うお酢や専用のさび取り剤は、浸ける時間に注意する
- リン酸やシュウ酸が含まれるさび取り剤は、効果が高いが皮膚や目につくと危険
ワイヤーブラシは、ステンレスや真鍮でできているものは硬いため、フェンスや自転車のフレームなどもともと頑丈な金属製品に使い、窓のサッシなど傷つきやすい金属製品の場合は、柔らかいナイロン製のものを使いましょう。
青さびに使うお酢やさび取り剤は、浸ける時間が短いとさびが取れず、長く浸けすぎると金属を傷めてしまいます。お酢に浸けるときはさびの状態をよく観察し、さび取り剤に浸けるときは取扱説明書に書かれた時間をよく守りましょう。
リン酸やシュウ酸が含まれるさび取り剤は酸性が強いため、使うときはマスク・ゴーグル・ゴム手袋などを使い、皮膚や目、口や鼻から溶液が入ってしまうのを防ぎましょう。
さび予防としてさび取り後にできる対策は?
さび落としが終わったら、新たにさびが発生しないよう、さび予防対策を行いましょう。特に、ワイヤーブラシや歯磨き粉などでさびを削り取って落とした後は、金属の表面に細かい傷がある状態で非常にさびやすいです。市販のさび止め剤と柔らかい布を使い、以下の手順でさび止めを行いましょう。
- さび止め剤を吹きつける
- さびを落とした箇所や、キズがついている場所にさび止め剤を吹きつける
- 柔らかい布で磨く
- さび止め剤を吹きつけた場所を、柔らかい布で磨き上げる
さび落としをしていなくても、金属表面のキズが気になったときにさび止めをしておくと、さびが発生しにくくなります。また、さび止め剤の効果は1ヶ月程度なので、定期的に塗り直しも必要です。
他にも、日常的に以下のようなことに注意しましょう。
- 保管方法に注意する
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- 金属製品を保管するときは、湿気や酸素が少ない環境で
- 雨の日は自転車を玄関に入れたり、乾燥剤を入れたハードケースにカメラを収納したりする
- オートバイなどの場合、雨の日はシートやカバーで覆って雨ざらしにしない
- 海に近い地域では、ときどき真水で洗って水分を拭き取り、塩分がついていない乾いた状態で保管する
- 金属に触れたら拭いておく
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- 皮膚にも塩化物イオンが含まれてさびの原因になるため、楽器や精密機器に触れたらクロスでしっかり拭き取っておく
- 湿気の多い環境に注意する
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- 水道の蛇口周りや浴室、洗面台はこまめに掃除したり水分を拭き取ったりする
- 浴室乾燥機や換気扇を使い、湿気を抑えることでもさびにくくできる
- 浴室や洗面所は、放置されたヘアピンやカミソリから発生したさびがうつることもあるので、放置しないよう注意する
また、ほうろうや塗装、めっきなどでさびにくいよう防食加工がされている製品でも、表面の加工部分が傷ついて中身が出てしまうと、そこからさびが発生することがあります。めっきやほうろうの製品は傷つかないよう丁寧に扱い、塗装はキズがついたらできるだけ塗り直すことでさびの発生を予防できます。
ほうろうの洗面台などにキズがついた場合、ホームセンターなどで購入できる修理剤を使って直せることもあります。こまめなメンテナンスは手間がかかるかもしれませんが、さびが発生して内部まで腐食されてしまう前に予防することが、金属製品を長持ちさせるためには非常に大切です。
おわりに:さび取りを自分でする場合、ワイヤーブラシや重曹、クエン酸を使おう
さびとは金属が化学反応を起こしてできた別の物質であり、特に鉄の赤さびは鉄の内部にまで侵食を広げ、ボロボロにして風化させてしまうさびです。さび取りが必要なのはこの赤さびと青さびの2種類で、黒さびは赤さび防止のために人工的につけたものですから、取る必要はありません。
さび取りにはワイヤーブラシ、重曹やクエン酸、酸性洗剤などが使えます。さびを取った後は、さび止め剤でさび予防も同時に行いましょう。
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