栄養バランスを整える上で、食事に欠かせないのが「野菜」です。ただ、どの野菜を選ぶかによって、得られる栄養価はかなり異なっていきます。そこで今回は、スーパーなどで身近に買える主要野菜の中で、特に栄養価が高いものをランキング形式でお伝えします。栄養を損なわないための料理法も、併せて知っておきましょう。
「栄養価の高い」野菜とは?
私たちが日々活動する上で欠かせないのが、エネルギー源となる食べ物の摂取です。エネルギー量を数値化したものがカロリーなので、「カロリーが高い野菜=栄養価が高い野菜」とも言い換えることはできますが、カロリーが低い野菜でも豊富な栄養素が含まれていることが多々あります。
健康維持のためにはカロリーだけでなく、ビタミンやミネラルなどの様々な栄養素を豊富に含む野菜を食べることが大切です。
以降では、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の機関誌「Preventing Chronic Disease(慢性疾患の予防)」にて2014年に発表された、健康に重要とされる17の栄養素(食物繊維、タンパク質、カリウム、カルシウム、鉄分、亜鉛、ビタミンB群(B1のチアミン/B2のリボフラビン/B3のナイアシン/B6/B9の葉酸/B12)、ビタミンA、C、D、E、K)の含有量の食品スコア結果をもとに、栄養価の高い身近な野菜をご紹介していきます。
栄養価の高い野菜:1位「クレソン」
ステーキの付け合わせやサラダなどによく使われるクレソンは、別名「オランダカラシ」とも呼ばれ、ピリッとした辛さと柔らかい苦みが特徴の野菜です。CDCの食品スコアでは栄養価が100点(100点中)で、重要な栄養素を幅広く豊富に含んでいるとされます。
クレソンに多く含まれる、主な栄養素は以下の通りです。
- βカロテン
- 体内でビタミンAに変換される、色素成分の一種
- 皮膚の維持作用、鼻や喉の粘膜を細菌から守る作用のほか、有害な活性酸素から体を守る抗酸化作用、免疫を増強する作用がある
- カリウム
- 細胞の正常化維持や血圧の調整など、体内の恒常性を維持する作用があるとされるミネラルの一種
- カリウムの摂取量を増やすことで、血圧の低下や脳卒中の予防、骨密度の増加につながることも近年わかってきている
- カルシウム
- 骨や歯などを作る栄養素
- 出血を止める、神経に働きかける、筋肉運動など、生命活動に欠かせない役割も担っている
- ビタミンK
- 血液凝固因子を活性化する脂溶性ビタミン
- 骨にあるタンパク質を活性化し、骨の形成を促す作用もあるとされる
- ビタミンC
- 細胞と細胞の間を結ぶ「コラーゲン」を作るのに必要な水溶性ビタミン
- 皮膚や粘膜の健康維持だけでなく、鉄分の吸収を助ける、病気の抵抗力を強める作用もあるとされる
- 有害な活性酸素から体を守る抗酸化作用もあることから、動脈硬化や心疾患予防効果も期待できる
- 鉄分
- 赤血球をつくるのに必要な栄養素
- 体内の鉄分の多くは赤血球を作る「ヘモグロビン」の成分になり、呼吸でとり込んだ酸素と結びつき、酸素を肺から体に届ける重要な働きを担う
まだ研究段階の話ですが、クレソンに豊富に含まれる「βカロテン」は、心疾患やある種のがんの発症リスクを低減させる効果があるともいわれています(ただし、がん予防や循環器疾患への効果を期待して、サプリメントからβカロテンのみを大量摂取させた実験では、効き目がないか、有害であったという報告もあります。摂取量には十分注意してください)。
このほか、クレソンの辛さはワサビや大根にも含まれる「シニグリン」という成分によるもので、利尿効果や食欲増進効果もあるとされています。
クレソンの料理時の注意点は?
クレソンは苦みや辛みはありますが、そのまま生で食べられるのが特徴です。葉だけでなく茎にも多くの栄養が含まれているので、苦みが気になる場合は茎部分をお浸しや汁物にしましょう。
また、クレソンに含まれるβカロテンは、食材や調理方法で吸収率が大きく変動するとされます。油脂と食べると吸収率が上がるとされているので、油脂を使った調理がオススメです。
関連記事:クレソンが栄養満点の野菜って知ってた?
栄養価の高い野菜:2位「チンゲンサイ」
CDCの食品スコアで栄養価91.99点をマークしたのが、中国野菜でおなじみのチンゲンサイです。
全体的に栄養素のバランスが良く、先述のクレソンと同様に「βカロテン」「ビタミンC」「カリウム」「カルシウム」「鉄分」等を多く含んでいます。特に豊富に含まれているのが、鼻や喉の粘膜を細菌から守る作用や抗酸化作用、免疫の増強作用等があるとされるβカロテンです。
クレソンよりもスーパーで見かけやすい野菜なので、ぜひ食卓に取り入れてみてください。
チンゲンサイの料理時の注意点は?
チンゲンサイには水に溶けやすい「ビタミンC」が多く含まれています。ビタミンCの流出を防ぐ点では、下茹でをせず炒め物にするか、そのまま茹でてスープやお浸しにするのがオススメです。
栄養価の高い野菜:3位「ほうれん草」
CDCの食品スコアで栄養価86.43点をマークしたのが、お浸しや胡麻和えなどの小鉢料理でよく使われるほうれん草です。「総合栄養野菜」とも呼ばれ、ビタミンやミネラルなど栄養素のバランスの良さが特徴です。
ほうれん草はクレソンと同じく、「βカロテン」「ビタミンC」「ビタミンK」「カリウム」「カルシウム」「鉄分」等を多く含む野菜です。クレソンやチンゲンサイと同様、特に「βカロテン」が豊富なほか、下記の栄養素も含まれています。
- マンガン
- 酵素を活性化する栄養素で、ほうれん草の赤い根の部分に多く含まれる
- 骨の形成に関わる作用がある
- 糖質・脂質の代謝や抗酸化作用のある多種類の酵素の構成成分として、成長や生殖に関与する
- 葉酸
- ビタミンB群に含まれる水溶性ビタミンの一種
- タンパク質や細胞を作るのに必要なDNAなどの「核酸」を合成する重要な役割を持つ
- 細胞分裂が活発な胎児の正常な発育に役立つ点から、妊娠初期の女性は特に摂取が推奨される
- 近年、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を防ぐという研究結果も報告されている
ほうれん草の料理時の注意点は?
クレソンの項でも述べましたが、ほうれん草に多く含まれるβカロテンは油脂と食べると吸収率が上がります。よって、バター炒めなどの調理法がオススメです。
関連記事:ほうれん草の栄養効果と手軽にアク抜きするコツとは?
おわりに:身近な野菜を取り入れ、栄養バランスを整えよう
チンゲンサイやほうれん草はスーパーなどでよく見かける野菜ですが、クレソンも近年スーパーフードとして注目が高まってきているので、見かける機会が増えているかと思います。いずれも簡単に調理可能で栄養価も高い優れた野菜ですが、栄養素を少しでも損なわないよう、調理方法にも気をつけてみましょう。
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