食中毒は細菌性感染型、ウイルス性、細菌性毒素型、植物性・動物性自然毒素中毒など種類がさまざまです。安心安全な食生活を送るためにも食中毒の種類や対策を理解しましょう。
食中毒は種類別で症状にどんな違いがあるの?
食中毒の原因には、細菌性、ウイルス性、自然毒(植物性、動物性)、化学物質性、寄生虫性などさまざまあります。その中で多くを占めるのが細菌性とウイルス性の食中毒です。
食中毒の症状は主に腹痛、下痢、嘔吐、発熱です。腸内で細菌やウイルスが増殖すると、胃腸機能が低下して下痢や嘔吐が引き起こされます。
下痢や嘔吐などの症状が長時間続くと、水分や電解質など体に必要な成分も体外へ排出されてしまい、脱水症状に陥ります。脱水症状が重症化すると命に関わりますので注意しましょう。
下記で種類ごとに食中毒の特徴や症状を紹介します。
細菌性感染型食中毒
細菌で汚染された食品によって、体内に細菌が増殖して病原性を持つと症状が引き起こされます。代表的なものは、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌です。
サルモネラ菌
- おもな原因
- 加熱が不十分な卵、肉、魚など。家畜、ペット、河川、下水にも存在している
- 特徴
- 乾燥に強く、熱に弱いです。少量でも食中毒を引き起こす
- 症状
- 食後6~48時間。吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛など
腸炎ビブリオ菌
- おもな原因
- 刺身や寿司など生の魚介類
- 特徴
- 真水に熱に強く、塩分があるところで増殖する
- 症状
- 食後4~96時間。激しい下痢や腹痛など
病原性大腸菌
- おもな原因
- 加熱が不十分な肉や生野菜
- 特徴
- 少量でも食中毒を引き起こす
- 症状
- 食後3~9日。激しい腹痛、下痢、血の混じった下痢など。重症の場合、命に関わる
カンピロバクター
- おもな原因
- 加熱が不十分な肉、飲料水、生野菜。ペットからの感染もある
- 特徴
- 乾燥に弱く、加熱で死滅する
- 症状
- 食後2~7日。下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛など
ウェルシュ菌
- おもな原因
- 食肉加熱調理品、水や土壌で増殖
- 特徴
- カレーやシチューなど鍋煮込料理などは家庭内でウェルシュ菌が増殖しやすい
- 症状
- 食後6~18時間。下痢、吐き気、嘔吐などの症状が出ますが、多くは軽症で済む
赤痢菌
- おもな原因
- 海産物、水、生野菜など
- 特徴
- 熱に弱く、65℃で死滅
- 症状
- 食後1~7日間続く。ほとんどは3日以内に激しい腹痛、下痢、血便などを発症
コレラ菌
- おもな原因
- 海産物、水など
- 特徴
- 人の腸管に入って増殖
- 症状
- 食後10時間~5日ほど。下痢や激しい嘔吐
エルシニア・エンテロコリチカ菌
- おもな原因
- 食肉加工品、乳製品、乳など
- 特徴
- 28℃~32℃を好み、人の腸管でも増殖します。耐熱性は低い
- 症状
- 食後24~6日。頭痛、下痢、発熱など
リステリア・モノサイトゲネス菌
- おもな原因
- 乳、肉など。特にフレッシュチーズ、生肉、発酵ソーセージ
- 特徴
- 酸に強く、食塩にも耐性を持ちます
- 症状
- 食後1~数週間とされるが、健康的な人であれば症状はほとんど現れない
細菌性毒素型食中毒
食品内の細菌が産生した毒素を摂取すると、食中毒の症状が引き起こされます。黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌が代表的です。
黄色ブドウ球菌
- おもな原因
- 人の皮膚や鼻などに存在する
- 特徴
- 熱に強い
- 症状
- 食後30分~6時間。吐き気や腹痛など
セレウス菌
- おもな原因
- 穀物加工品など
- 特徴
- 加熱に強く、食品中に増殖して毒素を産生する
- 症状
- 食後30~16時間。下痢や吐き気など
ボツリヌス菌
- おもな原因
- 魚肉発酵食品や缶詰、瓶詰、パック製品など
- 特徴
- 食品中で神経性毒素を産生する
- 症状
- 食後8~36時間。吐き気、嘔吐、めまい、頭痛など。毒素量によっては食後数時間で発症するが、潜伏期間が2週間になることもある。重症化する命に関わる
ウイルス性食中毒
ウイルスが付着した食品や人の手指を介して感染します。
ノロウイルス
- おもな原因
- 加熱が不十分な牡蠣などの二枚貝、水道水や井戸水
- 特徴
- 少量でも感染する強い感染力を持つ
- 症状
- 食後1~2日で吐き気、下痢、腹痛、発熱など
E型肝炎ウイルス
- おもな原因
- 加熱が不十分な肉や内臓。地域によっては生水など
- 特徴
- 熱に弱い
- 症状
- ほとんど無症状で済む。感染から6週間ほど経つとだるさ、皮膚が黄色くなる、発熱が現れる場合がある
自然毒素食中毒
動植物が本来持っている有毒成分、食物連鎖から動植物に取り込まれた有毒成分を食べることで引き起こされます。
植物性自然毒素中毒
- おもな原因
- トリカブト、毒キノコ、じゃがいもの表皮や芽
- 特徴
- 重症の場合は命に関わる
- 症状
-
- トリカブトの場合…嘔吐、下痢、麻痺など
- 毒キノコの神経系症状型…発汗、よだれ、しびれ、幻覚など
- 毒キノコの胃腸症状型…嘔吐、下痢、腹痛など
- 毒キノコの猛毒型…嘔吐、下痢、腹痛など
- ジャガイモの毒素ソラニン…溶血、腹痛など神経毒の症状
動物性自然毒素中毒
- おもな原因
- フグ、貝
- 特徴
- 重症の場合は命に関わる
- 症状
-
- フグの毒素テトロドトキシン…麻痺、血圧低下など
- 貝毒…麻痺性、下痢、巻貝中毒など
食中毒はどうすれば予防できるの?
食中毒予防の3つの基本は「つけない・持ち込まない・やっつける」です。
つけない
生の食材には細菌やウイルスが存在していますので、ほかの食品や調理器具にうつさないようにします。調理中や調理前後は手指をきちんと洗い、調理器具の洗浄と消毒を徹底してください。
持ち込まない
細菌やウイルスに感染している人はキッチンなどに入れないなど対策しましょう。
やっつける
食品を加熱することで細菌やウイルスを死滅させられます。加熱に強い菌やウイルスもありますが、加熱を十分にすることで多くの食中毒を予防できます。加熱のほか、洗浄と消毒も重要です。
各食中毒の予防ポイント
細菌性感染型食中毒
汚染された食品を食べることが主な原因なので、食品の加熱、殺菌、環境消毒、手洗いを徹底してください。
細菌性毒素型食中毒
毒素を摂取することが原因ですので、加熱殺菌と低温保存が予防のポイントです。
ウイルス性食中毒
ノロウイルスの場合は85℃以上で1分間以上の加熱、手洗いの徹底をしましょう。生食を避けて中心部まで十分に加熱してください。
自然毒
毒素を含む毒キノコを食べないように、安全性に不安がある場合は食べないようにしてください。ジャガイモの表皮と芽を避けましょう。
フグの有毒部位の除去ができる人は限られています。貝毒は収穫された海域がどこなのかが重要ですので、正しい情報を収集してください。
食中毒で病院に行ったほうがいいのはどんなとき?
次のような症状がみられたら医療機関をすぐに受診してください。
- 水分補給が難しい
- 1日に10回以上の嘔吐と下痢がある
- 激しい下痢症状が続く
- 半日以上尿が出ない、尿が少なくなった
- 血便がみられる
- 高熱が出ている
- 腹痛が治まらない
- 呼吸が不安定で意識が朦朧としている
- ぐったりとしている、体がふらつく
自己判断で下痢止めを服用すると、体が有害物を体外に排出しようとする働きを阻害してしまいます。高齢者や乳幼児は命に関わるリスクが高くなりますので、症状が重い場合は救急車を呼んでください。
食中毒の応急処置や療養中の注意点は?
食中毒が疑われる症状が出たら、安静にして常温またはぬるま湯で水分補給をしましょう。吐き気がある場合は少量の水分から摂取し、吐き気が治まったらスポーツドリンクや経口補水液などをとってください。
症状が落ち着いてきたら、少しずつ食事をとりましょう。胃腸にやさしい消化がいいものがおすすめです。
高齢者や乳幼児で嘔吐がみられる場合、吐いた物が喉につまらないように寝るときは横向きにしてください。
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おわりに:食中毒予防は基本の「つけない・持ち込まない・やっつける」から!
食中毒は種類が多く症状もさまざまですが、一年を通して基本の予防法を徹底しましょう。基本を続けながら、季節や食材ごとの予防法を組み合わせていくと安全です。
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