お風呂場やキッチンなど、水場にカビがはえやすいことはよく知られています。これは、水場ではカビがはえる(活性化する)条件が揃いやすいことが理由として挙げられますが、同じ理由から加湿器にもカビがはえやすいことはあまり知られていません。
そこで、今回は加湿器にカビがはえてしまう原因とその対策、カビを防ぐための使い方の注意点などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
加湿器にカビがはえる原因とは?
そもそも、序文でご紹介したように、カビがはえてしまうのは、カビが活性化する条件が揃っているからです。その条件とは「湿度・温度・栄養源」の3つで、詳しくは以下のような状態のことを言います。
- 湿度
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- カビが好むのは、約60〜70%を超える湿度
- 加湿器を含む水場は湿度が高いため、カビがはえやすくなると言える
- 加湿器周りの湿度が高いのはある程度仕方ないので、部屋全体の湿度が上がりすぎないよう注意
- 温度
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- カビが好むのは、20〜30℃くらいの温度(もっとも活性化するのは25〜28℃)
- 一般的な室内の温度と同じくらいになりやすいので、これも注意が必要
- ただし、もちろん20℃未満にするのは現実的ではないため、人間が快適と思えるくらいの温度であればOK
- 栄養源
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- 水アカ・ホコリ・皮脂汚れ・食べカス・石けんカスなどがカビの栄養源に
- カビはタンパク質・炭水化物などの生命維持に必要な養分を体内で作れないため、摂取する必要がある
- つまり、栄養源となるホコリやゴミをしっかり掃除することがカビ予防の第一歩
カビは厳密に言うと「カビ菌」、つまり細菌の一種で生きていますので、人間と同じように栄養分や酸素、適度な湿度や温度がなくては生きていけません。しかしここでやっかいなのは、カビが好む温度はだいたい人間が好む温度と同じくらいということであり、酸素がない部屋では人間も生きていけないということです。
そのため、一般的なカビに対する対処としては、湿度を下げること、カビにとっての栄養源をなくすことが挙げられます。カビが好む湿度は60〜70%以上とされていますが、人間が快適と感じる湿度は40〜60%くらいなので、加湿器をつけていても部屋の湿度が50%前後になるよう調整することで、カビのはえにくい環境にできます。
また、カビの栄養源となるのは主に水アカやホコリ、食べカスなどのゴミや汚れです。つまり、普段からしっかり掃除を行っていてホコリやゴミのほとんどない場所にはカビの栄養源がないため、やはりカビがはえにくい環境である、と言えます。
加湿器にはえるカビは2種類って本当?
お手入れせずしばらく加湿器を使っていると、なんとなく赤っぽくなってくる場所があるでしょう。それがまず1種類目の「赤カビ(ロドトルラ)」で、赤カビの状態を放置しているとやがてそこに2種類目の「黒カビ」がはえてきます。黒カビはもっともよく見るカビと言えますが、この黒カビがはえてきてしまうと掃除が非常に手間なのです。
まず、具体的な黒カビと赤カビの特徴を見ていきましょう。
- 黒カビ
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- 空気中のどこにでも存在しているカビで、どんなにキレイな場所でもゼロではないとされる
- 繁殖力が高く、細かな傷からでも奥まで入り込み、深くまで根を張って増殖する
- 赤カビなどをエサにして繁殖することもあるため、赤カビの後に黒カビがはえることが多い
- はえた素材に色素沈着を起こして黒くしてしまうほか、人体への悪影響も
- 赤カビ(ピンク汚れ、ロドトルラ)
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- ぬるぬるとしたピンク〜赤に見える汚れのことで、厳密には「ロドトルラ」という菌
- 高温多湿の場所が好物で水回り全般に繁殖しやすいが、人体への悪影響はなく、根もはらないので掃除は楽
- 繁殖のスピードが速いため、根絶しないとすぐに発生してくるので注意が必要
- スポンジでサッと拭くだけでなく、最初にしっかり根絶してしまうのがポイント
水場でまず始めに見るのはピンクの赤カビが多く、その赤カビをエサにして黒カビが繁殖します。赤カビ自体が何か悪さをするわけではありませんが、その赤カビの後にはえる黒カビははえた素材に色素沈着を起こして黒く変色させてしまうほか、人間が大量に吸い込むとアレルギーなどを引き起こす可能性もあります。できるだけ、赤カビのうちにしっかり根絶してしまいましょう。
加湿器にカビがはえるのはなぜ?
では、なぜ加湿器にこれらのカビがはえてしまうのでしょうか。加湿器は、タンクに補給された水を噴霧して部屋の湿度を上げる装置です。そのためタンク内は常に湿度が非常に高い状態が続き、24時間稼働を続けて掃除ができないなどの理由で水アカが溜まると、カビの栄養源が増えてしまいます。
特に、超音波加湿器はスチーム式と比べて高温になりにくく、50℃以上の温度でカビが殺菌されるスチーム式と比べるとカビが死滅するタイミングがありません。そのため、スチーム式の加湿器よりも超音波加湿器の方がカビが繁殖しやすいと考えられます。超音波加湿器の場合は、よりこまめに水タンクの掃除を行いましょう。
加湿器内にカビが発生してしまうと、水と一緒にカビも噴霧してしまうことになり、室内にカビが撒き散らされてしまいます。撒き散らされたカビを体内に吸い込んでしまうと肺や気管支に異常をきたし、喘息や気管支炎などを引き起こすこともあります。初期症状はのどの痛みや咳といった風邪に似た症状なので、気づきにくいことも多く非常にやっかいです。
加湿器はハウスダスト対策などをはじめ、快適な暮らしを保つために有効な装置ですが、掃除やお手入れを怠って汚れた水を撒き散らしてしまうと、加湿器が新たな病気の原因になってしまうこともありえます。しっかり掃除をして、加湿器にカビがはえるのを防ぎましょう。
加湿器のカビを防ぐための掃除方法は?
それでは、具体的に加湿器のカビを防ぐための掃除方法をご紹介します。加湿器を開けてみて中の様子を確認し、ぬるついた汚れがあったり、出てくる蒸気がカビ臭かったりするようなら、除菌掃除を行いましょう。特に、フィルターなどは定期的に掃除しないとカビの温床になってしまいますので、週に1回くらいのペースが望ましいです。
まずは、以下の道具を準備しましょう。
- 重曹(または台所用粉末洗剤)
- 鍋か耐熱容器
- 洗面器
重曹を使った汚れ落としの手順は、以下のようになります。
- 重曹水を沸騰させる
- 水1Lに対して重曹約60gを目安に混ぜ、鍋かレンジで加熱する
- 重曹水をさます
- 触れるくらいの温度になるまで放置する
- カビた部品を外す
- 加湿器の水を入れるトレイ、フィルターなど、カビ汚れがある部品をすべて外す
- つけおき洗い
- シンク・洗面器・ボウルなどに重曹水を入れ、外した部品を30分程度つけおき洗いする
- すすぐ
- 重曹が残らないよう、キレイな水でよくすすぐ
- 乾燥させる
- 完全に乾燥させたら、元通りにとりつけて完了
重曹は弱アルカリ性ですが、温めるとアルカリ性が強くなり、カビを死滅させられるだけの強さを発揮します。そのため、つけ置き洗いで簡単に消毒ができるのです。重曹水をあたためて冷ますのが手間だという場合は、粉末の台所用洗剤をぬるま湯に混ぜて同じようにつけ置き洗いをしても構いません。
重曹水につけても取れない汚れ、もしかしてカビじゃないかも?
重曹水で掃除したのに、こびりついた汚れが残ってしまうという場合、その汚れはカビではなく水アカかもしれません。水アカは水に含まれるミネラル分が固まったものですから、人体に有害な物質や不衛生なものではありませんが、フィルターにこびりつくと性能を落としてしまいますので、これも掃除が必要です。だいたい月に1回くらいを目安として掃除すると良いでしょう。
具体的には、水1Lに対してクエン酸大さじ1杯を混ぜた水に3時間程度つけ置き洗いし、最後に歯ブラシなどで軽くこするだけです。クエン酸も重曹と同じナチュラルクリーナーの一種で、環境にも人体にも悪影響はほとんどありませんので、安心して使えます。ただし、最後にすすぎと乾燥をしっかりするのを忘れないようにしましょう。
水アカはすぐにできる汚れではないので、カビ予防ほど頻繁に行わなくても良いのですが、水がなくなって補充するタイミングなどでフィルターや受け皿を軽く水洗いしておくと、より水アカが溜まりにくくなります。
加湿器のカビを予防するための使い方の注意点は?
加湿器にカビができないようにするためには、とにかく水を清潔に保つことが重要です。そのために、以下の4つのポイントに注意しましょう。
- こまめに水を入れ替える
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- できれば毎日、少なくとも2〜3日に1回は使い切っていなくても水を交換する
- ホコリなどが入り込むと雑菌が繁殖してしまうため、水を入れ替えて清潔を保つ
- 吸気口をキレイに保つ
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- 加湿器の中には、空気を吸い込む「吸気口」がついているタイプも
- このタイプは、吸気口が汚れていると内部も汚れてしまうため、気づいたら拭き取るようにする
- 使わないときは水を入れない
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- 暖かくなって加湿器が必要なくなってきたら、すぐに水を捨てて完全に乾燥させる
- 水を入れたまま放置していると、それだけでカビが広がりやすくなる
- 水道水を使う
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- 水道水は塩素などで消毒されているが、ミネラルウォーターには使われていない
- ミネラルウォーターは飲用には良いが、長時間外気に触れる加湿器内では雑菌やカビが繁殖しやすい環境を作ってしまう
水が汚れなければ、カビはぐっとはえにくくなります。ぜひ、普段から上記の4つのポイントを意識して加湿器を使いましょう。
おわりに:加湿器のカビは水が原因。まずは予防をしっかりと
カビがはえる原因は「湿度・温度・栄養源」の3つが揃ってしまうことです。加湿器はその性質上、湿度や温度を変えるのは難しいですが、カビの栄養源となる水アカやホコリ、ゴミをなくすことでカビをはえにくくすることができます。
掃除方法としては、カビの殺菌と予防のために加熱した重曹水でつけ置き洗いをするのがおすすめです。また、日頃から水が汚れないようこまめに変えたり水道水を使ったりすることを心がけましょう。
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