水場などにはえることでよく知られるカビですが、必ずしも水場にしかはえないわけではなく、室内にもはえることがあります。室内でカビのはえやすい場所の一つとして、畳の部屋が挙げられます。
そこで、今回は畳にはえてしまったカビの掃除方法や、そもそもなぜ畳にカビがはえるのか、その予防方法まで合わせてご紹介します。畳のメンテナンスのため、ぜひ一度チェックしてみてください。
畳にカビがはえてしまう原因とは?
畳にカビがはえてしまうのは、肉眼では見えないほど小さなカビの胞子が空気中から畳表にくっつき、やがて畳表に増殖していくためです。もちろん、カビがくっついたら必ず増殖するというわけではなく、カビが発生しやすい条件を満たしてしまうと増殖してしまうのです。お風呂場やキッチン、壁紙などにカビがはえるのも同じ仕組みです。
具体的にカビが発生しやすい条件とは、以下のようなものです。
- 20〜30℃の温度
- 60〜70%以上の湿度
- ホコリ、チリ、ゴミなどの栄養分
特に、栄養分がある場所や湿度の高い場所ではカビがはえやすいことがわかっています。例えば、湿度も温度も高い状態が続く梅雨の時期には、カビにとっての栄養分が付着している場所で簡単に3つの条件が揃ってしまうのです。風通しが悪くて掃除が行き届いていない畳などは、カビにとって格好の繁殖場所なのです。
他にも、畳にカビがはえやすくなる理由には以下のようなものがあります。
- 「い草」が湿気を吸収する
- 畳の表面「畳表」に使われる天然のい草には、空気を吸収して放出するという性質がある
- このため、天然の畳が敷かれている部屋はある程度の除湿効果が見込まれる
- 一方で、あまりにも湿度の高い状態が続くと、い草に吸収される水分が飽和状態のままに
- 湿気の調節機能が働かなくなり、たっぷり水分を含んだい草にカビが生えてしまう
- 湿度を吸収する機能は新鮮ない草ほど強いため、新しい畳や表替えをしたばかりの畳の方がカビがはえやすく、古くなった畳ほどカビがはえにくい
- 畳の上に布団が敷かれている
- 畳に直に布団を敷いていると、カビがはえやすくなる
- 人間は寝ている間にコップ1杯分もの「寝汗」をかく
- 寝汗の水分を布団が吸収して底に溜まり、さらにその下の畳が水分を吸ってしまう
- 布団を敷きっぱなしの万年床にしている場合、知らない間にカビがはえてしまっていることも
- フローリングの上なら吸湿性はないので、床にはカビがはえないが、布団にカビがはえやすくなる
天然い草の畳表には、湿気の吸収・放出を自然に行える「調湿作用」に加え、空気中のホコリを吸着してくれる性質があります。これは、日本の風土を考えると非常に優れた家具と言えますが、湿度が非常に高い状態が続くと、吸い込んだ湿気に加えて吸着したホコリがカビの栄養源となってしまい、カビのはえやすい条件が揃ってしまいます。
具体的には、以下のようなケースでカビがはえやすいと考えられます。
- 昼間、留守にしていて和室を締め切っている
- 梅雨や夏季が、普段よりも高温多湿な年である
- 建物の床下から湿気が上ってきやすい
- 風通しや日当たりの悪い部屋である
- 室内にタンスなどの大きい家具が多く、風通しが悪い
- コンクリートマンション系の建物で、閉め切られている
- 新しい畳の上に、何かの敷物をしている
他にも、2階の部屋はカビていないのに、1階の部屋はカビてしまうというケースもあります。この場合、2階には温かい空気が上がって湿度が低くなりますが、1階には冷たい空気が下がってきて湿度が高くなりやすく、さらに床下からの湿気の影響も受けやすいから、とかんがえられます。
畳にはえたカビの掃除方法は?
畳にはえたカビは、あまりにも酷い状態になっていない限りはたいてい自分で掃除できます。しかし、掃除してもとれない、あるいは黒カビが畳一面に広がってしまっている、などという場合には畳の交換や表替えをしましょう。自分で掃除するには、まず以下のような道具を準備します。
- 消毒用アルコール(エタノール濃度が70〜80%のもので、無水エタノール:水を8:2で混ぜてもよい)
- スプレーボトル
- 使い古しの歯ブラシ
- 雑巾
- ゴム手袋
- マスク
- 重曹(黒カビがはえている場合のみ)
畳のカビ掃除に使うのは、主に消毒用アルコールです。カビ取り剤というと浴室やキッチン用の「塩素系漂白剤」が有名ですが、これらを畳に使ってしまうと畳が変色してしまう可能性があります。消毒用アルコールを買ってきてそのまま使うか、無水エタノール(アルコール濃度がほぼ100%)を買ってきて水道水と8:2の割合で混ぜ、スプレーボトルに入れて使いましょう。
消毒用アルコール(エタノール)は傷口の消毒や除菌に使われることが多い、揮発性の高い液体です。除菌後はすぐに蒸発してしまうので、寝そべったり素足で歩いたりする畳に使っても安全で、畳を傷める心配もほとんどありません。ただし、畳に黒カビがはえてしまっている場合、消毒用アルコールのみでの除去が難しいため、カビを中和できる重曹を一緒に使います。
エタノールを使うときは、掃除中に浮遊するカビ菌を吸い込まないようにマスクをし、直接アルコールに触れることでの手荒れを防ぐためにゴム手袋をしましょう。準備ができたら、以下のような手順で畳を掃除していきます。
- 1:部屋の換気をする
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- 窓を開ける、換気扇を回すなどで部屋の風通しを良くする
- 室内に漂っているカビの胞子を、ある程度室外に追い出す効果が期待できる
- 2:消毒用アルコールをスプレーする
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- カビ全体に消毒用アルコールを吹きつけ、カビと馴染ませるために20分くらい放置する
- 放置することでカビの根までアルコールの殺菌作用が働き、除去しやすくなる
- 3:歯ブラシでカビを掻き出す
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- 使い古しの歯ブラシで、畳の目に入り込んだカビを掻き出す
- 強く擦りすぎると畳を傷めるため、やさしく擦る
- 4:繰り返す
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- カビが取れるまで2〜3の作業を繰り返す
- 5:黒ずみには重曹を
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- 黒カビの発生で畳が黒ずんでいる場合、重曹を粉のままふりかける
- その上から消毒用アルコールを吹きかけ、歯ブラシでやさしく擦る
- 6:再度アルコールスプレーをする
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- カビを除去し終えたら、はえていた場所に消毒用アルコールを吹きつける
- 7:乾燥させる
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- 畳の目に沿って乾拭きする(目の奥まで消毒作用が行き渡りやすくなる)
- 部屋の窓や換気扇はつけたままで、畳をしっかり感想させる
また、畳を掃除するときは、すぐに乾拭き・水拭き・掃除機やホウキなどをかけないよう注意しましょう。水拭きは畳に水分を与えてしまい、カビ菌の好む高湿度な状態を作ってしまいます。乾拭きをしてしまうと畳の目の間に菌が入ってしまうため、除菌がさらに難しくなります。掃除機やホウキはカビ菌を部屋中に撒き散らしてしまいますので、絶対にいけません。
畳にカビがはえるのを予防する対策はある?
畳にカビがはえるのを防ぐには、以下のような対策が効果的です。
- 風通しを良くする
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- カビは60〜70%以上の高い湿度を好むため、畳のある部屋には湿気をこもらせないよう気をつける
- 雨が降っていない日は窓を開け、換気扇やサーキュレーターを利用して空気を循環させる
- 窓を開けた状態で扇風機やエアコンの送風機能を使うのも非常に効果的
- 窓を閉めてエアコンの除湿機能(ドライ)や除湿機を使うのもおすすめ
- マンションやアパートなどの集合住宅、梅雨や夏季には特にこまめに換気を行う
- こまめな掃除
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- ホコリや汚れはカビの栄養源になるため、こまめに畳を掃除する
- 定期的に掃除機をかけ、年2回は大掃除を行う
- 畳だけでなく押入れやタンスの裏面のチリやホコリを取り、陰干しして風を通す
- 寝室なら、こまめに布団を手入れする
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- 布団が吸収した寝汗でカビが繁殖してしまうケースが多い
- こまめに布団を天日干ししたり、布団乾燥機を使ったりして湿気を逃がす
- 干すときは、1時間ほど干したら裏返しにしてもう1時間外の風に当てる、という方法で布団の奥の水分まで蒸発させる
- 畳に直に布団を敷かず、畳と布団の間にすのこを敷いて空間を作ると畳が湿気を吸いにくくなる
- すのこと布団の間に市販の防湿シートを敷くとさらに効果的
- 布団の敷きっぱなし(万年床)などはカビの温床になってしまうため、絶対に避ける
- 布団用のコンパクトな物干しを用意し、朝起きたらさっと布団をかけるようにするのがおすすめ
- カーペットを敷くときには防湿シートを
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- 畳の上にカーペットを敷くと畳がフタをされ、湿気がこもりやすくなってしまう
- 畳のカビ予防のためにはできるだけ敷物を避け、どうしても敷く場合は市販の防湿シートを敷いた上に
- シートが湿気を吸収するため、畳が湿気を吸い込みにくくなる
- 防虫効果もある防湿シートを使うと、カビだけでなくダニ予防にもなる
- 掃除機は本体を手で持ち上げて
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- 排気でホコリやカビの胞子が舞い上がるので、手で持ち上げて使うと良い
- 畳だけでなく、フローリングでも同じ
- アルコールを吹きかける
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- 定期的に消毒用アルコールをかけて除菌し、固く絞った雑巾で水拭きする
畳にカビがはえるのを防ぐためには、まず湿気を溜め込ませないことです。風通しをよくして湿度を下げ、防湿シートなどを使って畳が吸収する水分を抑え、カビが好む湿度にならないよう気をつけましょう。さらに、カビの栄養源を絶つため、ホコリや汚れがたまらないようこまめに掃除を行うことも大切です。
おわりに:畳のカビは消毒用アルコールで除菌しよう
畳にカビがはえてしまう直接の原因は、肉眼では見えない小ささのカビの胞子が畳表にくっつき、増殖してしまうからです。カビが増殖してしまうのは湿度や栄養分があるからですが、風通しの悪い場所などでは簡単にその条件が揃ってしまいます。
もしカビがはえてしまったら、消毒用アルコールで除菌しましょう。また、日頃から風通しをよくして湿度を下げ、防湿シートやすのこなどを上手に使って湿気を溜めないようにしましょう。
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