寝るときに使うマットレスは、ダニが発生しやすい場所の一つとされています。換気や掃除を怠っていると、気づかないうちにいつの間にか身体を刺されてひどい痒みが生じたり、死骸や糞でアレルギー性疾患を発症してしまったりすることもあります。
もしマットレスにダニが発生してしまったら、どうやって退治すれば良いのでしょうか。退治した後の再発防止策も合わせて見ていきましょう。
マットレスのダニが増える原因は?
そもそも、ダニはどんな環境で増えやすいのでしょうか。具体的には、20〜30℃程度の温度、70%以上の湿度、十分な栄養源の3つの条件が揃うと繁殖しやすくなるとされています。さらに、ダニは外敵から身を守るため、隠れられる場所を好みます。マットレスを含む寝具にダニが繁殖しやすい理由は、3つの条件に加えて場所としても良い環境が揃っているためです。
- 人間が快眠できる温度や湿度はダニにとっても好都合
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- 人間の快眠環境は、夏で温度26℃前後、湿度60%前後
- 人間にとって快適な環境は、ダニの繁殖しやすい温度・湿度と非常に近い
- 特に、ジメジメした梅雨は高温多湿の環境になりやすい
- 人の体温や夏の寝汗、冬の結露などが温度や湿度を上げてしまう
- 繁殖に必要な栄養分が豊富
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- ダニの主食は人の髪の毛、フケ、アカ、皮脂汚れ、食べカスなど
- フケやアカ、髪は新陳代謝で自然に落ちるものなので、完全に取り除けない
- 寝ている間の新陳代謝や、無意識に身体や頭を掻いていることもある
- マットレスの上で飲食をした食べカスが落ち、ヒョウヒダニの栄養源になることも
- 寝具の繊維は、ダニが隠れやすい場所に
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- 寝具には繊維が密集していて、ダニが身を隠しやすい場所になっている
- 夏のタオルケット、冬の毛布などもダニが生息しやすい環境に
このように、温度や湿度が最適な状態になりやすく、人間のフケやアカ、髪の毛などの栄養分が豊富に付着しやすく、さらに繊維が多くて隙間に隠れやすい寝具はダニにとって住みやすく、繁殖しやすい環境だと言えます。1990年に行われたダニ調査によれば、暖かく湿った環境下ではダニの発育スピードが3倍以上になると報告されています。
例えば、温度が16℃のときは卵から成虫になるのに約123日かかっていますが、23℃になると約34日にぐっと短くなります。この報告においては、23℃のとき1匹のメスが産卵する個数が約68個とされていますので、1ヶ月もあれば1匹のダニから100匹に増えるという表現もあながち嘘とは言いきれません。
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マットレスのダニを退治する方法は?
マットレスのダニ対策は、退治・除去をセットで行うことが重要です。このとき、ダニを死滅させる前にただ掃除機をかけても、ダニは繊維にしがみついて離れないことが多く、駆除の方法としてあまり有効とは言えません。そのため、まずダニを死滅させ、その後に死骸や糞などのアレルゲンを掃除機などでしっかり取り除く、という順番で行います。
マットレスのダニ退治方法としてはさまざまなものが上げられますが、「側生地を高温で洗濯・乾燥」「布団乾燥機による熱処理」「薬剤による処理」「クリーニング業者に依頼する」の4つが効果的でしょう。一方、布団などに推奨される「スチームアイロン」「熱湯処理」などは、マットレスの素材を傷めてしまう可能性が高く、場合によっては使用感が大きく損なわれ、買い換えなくてはならなくなってしまうこともありますので、マットレスのダニ対策としては推奨されません。
また、「ダニ取りシート」や「アロマ」「除湿機」といったアイテムはあくまでもダニ予防のためのもので、既に発生してしまったダニを退治するのには向きませんので、注意しましょう。では、効果的と考えられる4つの方法について、具体的にご紹介します。
側生地を高温で洗濯・乾燥する方法って?
側生地とはマットレスについているカバーのことで、これを洗濯機で温水洗浄し、乾燥させるのが最も手軽で確実なダニ退治方法です。寝具に発生するダニのほとんどは「コナヒョウダニ」という種類のダニで、このコナヒョウダニは50℃の熱で10分間処理すると死滅することがわかっています。
もちろん、側生地自体が50℃の熱に耐えられるかどうかを洗濯表示タグで確認する必要はありますので、カバーを外したらまずタグを確認しましょう。もし、側生地が60℃の熱処理にも耐えられるようであれば、温水洗浄を60℃に設定して熱処理を行うと、より確実にダニを死滅させられます。
側生地が外せないタイプのマットレスはどうする?
高反発・低反発タイプのウレタンマットレスなど、中には側生地が外せないタイプのマットレスもあります。これらのウレタンマットレスはクリーニング業者に依頼しても扱ってくれないことが多く、できるダニ対策は非常に限られています。次に紹介する「布団乾燥機による熱処理」または「薬剤による処理」を試してみましょう。
布団乾燥機で熱処理する方法って?
前述のように、寝具に発生するダニは熱に弱いことから、布団乾燥機で熱処理を行うことも効果的です。ただし、熱が届かないマットレスの深部に逃げていってしまう可能性がありますので、完全に駆除できるとは限りません。そこで、できるだけ駆除できるダニを多くするため、以下の2つのポイントを意識して行うと良いでしょう。
- 部屋を暗くし、約1時間程度待ってから熱処理を行う
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- ダニは夜間に活動する習性があるため、部屋を暗くすることでマットレスの表面に出てくるよう仕向ける
- 表面に出てきたところで熱処理を行えば、効率的にダニを死滅させられる
- 朝晩2回の処理を、連日続けて行う
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- 1回だけでは効果が薄いため、何度も連続で行う
- 実験によれば、3回行って約70%のダニを死滅させられたと報告がある
一方で、布団乾燥機による熱処理にはデメリットもあり、約70℃の熱をマットレスに当てることから、ウレタンなどの使用感を損なう可能性があります。マットレスがへたってしまう原因にもなりますので、そもそもマットレスが高温に対応できるかどうか、事前に確認してから処理を行いましょう。
ダニ駆除の薬剤を使って処理する方法って?
ダニ駆除剤を使えば、熱処理を行わないので使用感を損なわずにダニを死滅させられます。ただし、市販のダニ駆除剤にはたくさんの種類がありますので、必ず「ふとん・マットレス対応」と書かれているものを選びましょう。また、換気をしながらスプレーする、薬品を間違って吸い込まないようマスクを着用する、など、使うときは十分に注意しましょう。
肌に直接触れる寝具に対して薬剤を使うことになりますので、敏感肌の方や薬剤・刺激に敏感な体質の方などは少量から徐々に増やしながら使うなど、身体に負担がかからないよう注意することも必要です。
クリーニング業者に依頼するのも一つの手
クリーニングのプロに依頼し、ダニだけでなくカビや汗ジミなどの汚れもスッキリキレイにしてもらうのも一つの方法です。特に、忙しくてあまり自宅で洗濯や熱処理を行う暇がない方にはおすすめの方法です。費用はマットレスのサイズによって異なりますが、だいたい片面で8,000円〜20,000円くらいが一般的です。
裏表の両面にクリーニングを行う場合は、費用が1.5〜2倍になります。ですから、10万円を超えるほどのマットレスでまだ数年は使い続けられる、という場合はクリーニングがおすすめですが、そもそも安く購入したマットレスや、へたってきて使用感が悪くなってきているマットレスの場合は、クリーニングよりも買い替えてしまった方が良いかもしれません。
また、前述のようにスプリングが使われていないウレタン製のマットレスはクリーニングしてもらえないことも多いですから、頼みたい業者でウレタン製のマットレスを扱っているかどうか、きちんと確認しましょう。
スチームアイロンや天日干しはなぜいけないの?
ダニ退治の方法として、スチームアイロンや天日干しが紹介されていることもありますが、マットレスにこれらの方法を行ってもあまり効果が見込めません。具体的には、以下のような理由が挙げられます。
- スチームアイロン
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- 敷布団に対しては効果が見込めるが、マットレスには推奨されない
- スチームの熱や水分でマットレスの詰め物素材が劣化し、使用感が大きく損なわれる可能性が高い
- 詰め物素材はコイルマットレスでも使われているものなので、すべてのマットレスに推奨できない
- 天日干し
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- 天日干しでダニを退治しようとすると、側生地だけを真夏の炎天下に数日間干す必要がある
- 高温で洗濯する方が遥かに時間も手間もかからない
- さらに、ウレタンマットレスの場合は紫外線や熱で劣化してしまう可能性が高い
このように、スチームアイロンは敷布団などの布団には有効でも、マットレスの場合は大きく使用感を損なう可能性がありますので避けましょう。天日干しの場合、そもそもダニ退治としてはあまり効果が得られません。側生地だけを外して高温で選択するか、布団乾燥機や薬剤などを使いましょう。
ダニを退治したら、しっかり駆除も忘れずに
前述のような方法でダニをしっかり死滅させたら、アレルゲンとなるダニの死骸や糞、脱皮後の殻などを除去しなくてはなりません。とは言っても、マットレスクリーナーなどの専用の掃除機をわざわざ購入しなくても、一般的な吸引力の高い掃除機をかければ良いだけです。このとき、サッと全体をかけるのではなく、マットレスの表面をまんべんなくじっくりかけていきましょう。
また、ダニが集中して生息しやすい「マットレス上部(頭が位置する方)」「マットレスとベッドの隙間」「キルティングの縫い目」の部分は特に念入りに掃除機をかけていきます。側生地を外して洗濯機で洗った場合は、外した後の詰め物などの表面にもしっかり掃除機をかけておきましょう。
マットレスのダニの再発はどうやって予防すればいい?
ダニを退治・除去したら、ダニが再発生するのを防ぎましょう。具体的には「防ダニシーツを使う」「除湿敷きパッドを使う」「マットレスのお手入れをこまめに行う」「かけ布団のダニ退治も行う」の4つがポイントです。それぞれ具体的に見ていきましょう。
防ダニシーツを使ってダニを予防しよう
防ダニシーツは、マットレスにダニやハウスダスト、ホコリなどがつくのを防いでくれます。そのため、ダニの栄養源となるフケ・アカ・皮膚などの老廃物がマットレスに付着せず、防水加工のものなら寝汗で湿ることもありませんので、マットレスを衛生的で清潔に保つことができます。
防水加工の他にも薬剤加工や高密度織りなどの防ダニシーツがあり、薬剤加工の場合は洗濯や天日干しなど使用によってだんだん機能が低下してしまいますが通気性は素材が良ければ良く、高密度織りの場合はダニを通さない効果が持続しやすいのが大きな特徴です。基本的には防汚性が高く穴が開かない限り効果の続く防水加工がおすすめですが、用途や使用感で選ぶのも良いでしょう。
除湿敷きパッドを使ってダニを予防しよう
除湿敷きパッドは寝汗などを吸収してマットレスが湿るのを防ぎ、湿気を好むダニが繁殖しにくい環境にしてくれます。カラッとした爽やかな寝心地を保つ効果もありますので、ダニ対策やカビ対策だけでなく、寝心地のアップにもつながります。
マットレスのお手入れをこまめに行ってダニを予防しよう
そもそも、マットレスのお手入れをこまめに行うことも重要です。例えば、日頃から以下のようなことを心がけましょう。
- できるだけ寝室の窓を開け、換気を行う
- マットレスの表面が乾きやすいよう、使わないときは掛ふとんをめくってマットレスの足元の方にまとめておく
- 夏などの暑い時期は、3日に1回くらいシーツを取り替える
- マットレスが両面使える場合、6ヶ月に1回はひっくり返して違う面を使う
マットレスのお手入れと言っても難しいことをする必要はなく、換気をよく行ってマットレスに湿気が溜まらないよう注意するだけです。両面使いできるマットレスなら、できるだけ半年に1回ひっくり返すとへたりにくいだけでなく、同じ面だけが汚れるのを防げます。また、マットレスプロテクターなどを使って汚れを防ぐのも良いでしょう。
掛け布団のダニ退治も行おう
マットレスに発生するダニは、ほとんどが布団から移ったものとされています。布団はマットレスよりも湿気が溜まりやすく、人の肌が直接触れるため、奥までダニが入り込んで生息しやすい場所なのです。ですから、マットレスのダニ対策を行ったら、できるだけ同時に掛け布団のダニ対策も行いましょう。
おわりに:マットレスのダニ対策は、退治と除去を同時に行うのがポイント
マットレスに住み着いたダニは、単に掃除機で除去しようとしても生きていると繊維にしがみつき、除去しにくい傾向があります。そのため、まずは熱や薬剤でダニを死滅させ、その後に死骸や糞などを除去するのが効率的です。
また、除去後はダニの再発を防ぐため、防ダニシーツや除湿敷きパッドを使ってマットレスが湿らないようにましょう。寝室の窓を開けて換気したり、半年に1回はひっくり返したりするのも効果的です。
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