冬になると、インフルエンザなどとともに猛威を振るうウイルスの一つに「ノロウイルス」があります。激しい嘔吐や下痢などを引き起こすこのウイルスですが、消毒方法や予防方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、ノロウイルスに効果的な消毒方法をはじめ、感染予防対策や効果的な除菌方法についてご紹介します。ノロウイルス予防・対策に、ぜひチェックしてみてください。
ノロウイルスの消毒にアルコールは効かない?
ノロウイルスを消毒する上で効果があるのは、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水、そして熱湯だと考えられています。それぞれどのように効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
- 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)
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- 水道水で消毒に使われ、その効果の高さからカット野菜や果物の消毒にも使われる
- 厚生労働省の感染対策マニュアルなどでも紹介されているように、ノロウイルスの不活化に効果的
- その反面、皮膚に対する刺激を始め、金属に対する腐食作用と衣類の漂白作用がある
- 水で薄め、ノロウイルスが付着した場所を吹いたり、スプレーで散布したりする
- 手袋をつけるなどして、絶対に手で直接触ったりしないよう気をつける
- 次亜塩素酸水(HClO)
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- 次亜塩素酸水の殺菌力は、次亜塩素酸イオンの約80倍とされるため、次亜塩素酸ナトリウムよりも殺菌活性が高いとされる
- ノロウイルスを始め、さまざまな細菌に対して高い効果が発揮される
- 食品への残留性も低く、次亜塩素酸ナトリウムで問題となる「クロロホルム」の生産量も少ない
- つまり、次亜塩素酸よりも効果的で安全に使える、と言える
- 熱湯
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- 熱湯はほとんどの細菌に有効だが、ノロウイルスに対しても有効
- 85℃以上の熱湯に包丁やまな板、布巾などを1分以上つけて加熱する
- ノロウイルスを保菌している可能性がある食材も、基本的には85℃以上で90秒以上、中心部までしっかり加熱すれば感染性を失わせられると考えられる
一方で、手指の消毒として一般的に使われる消毒用アルコール(エタノール)は、ノロウイルスに対してはあまり効果が期待できません。消毒用アルコールが一部の細菌を不活化できることは事実ですが、ノロウイルスはエタノールに対する抵抗性が高いため、アルコールでは不活化できないのです。
とはいえ、近年の研究では濃度80%の消毒用エタノールでも、ノロウイルスの代替ウイルスである「カリシウイルス」や「マウスノロウイルス」などにはある程度の消毒効果が認められています。また、手指の消毒に塩素系の消毒剤を使うと手荒れを引き起こしてしまいますので、手指の消毒には消毒用アルコールを使いましょう。
家庭でできるノロウイルスの感染予防対策は?
ノロウイルスに感染すると、嘔吐・下痢・高熱・腹痛などの症状が現れます。ノロウイルスのち療法とは基本的にこれらの症状に対する対処療法であり、いまだにウイルスそのものに対する有効なワクチンや特効薬などは存在しません。しかも、感染しても特異的な免疫を獲得できず、麻疹や水疱瘡などとは違い、繰り返し感染してしまう可能性もあるのです。
そのため、ノロウイルスに対しては「かかったら治す」のではなく、「そもそもかからないように予防する」ことが最も重要だと考えられます。以下の対策を行うことで一定の予防効果が得られることがわかっていますので、特にノロウイルスが流行しやすい寒い季節には、感染予防対策を徹底しましょう。
- 手洗い
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- 最も手軽で効果的なのが、石けんを使った手洗い
- 石けんや水でノロウイルスを死滅させられるわけではないが、手についたノロウイルスを洗い落とせる
- 爪や指の間、手首などもしっかり洗い、タオルを使い回さないことが重要
- 健康管理
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- 料理をする人は、普段から自身がノロウイルスに感染しないよう、周囲の健康状態にも注目する
- 本人だけでなく、家族にノロウイルスの可能性がある症状が出たら、食材に関わることをやめる
- 調理器具を消毒する
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- お皿、食器、鍋などは洗剤を使って丁寧に洗う
- 台所用漂白剤などによる除菌も高い効果が期待できる
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家庭でノロウイルスに汚染された汚物を消毒・処理する方法は?
万が一、家庭でノロウイルスに感染した人が出た場合は、吐瀉物がノロウイルスに汚染されますので、むやみに触ったり近くに寄ったりすると感染の危険性があります。ですから、以下の手順に従って、注意しながら速やかに処理を行いましょう。
- 使い捨てのビニール手袋とマスクをつけ、密閉できるゴミ袋を用意する
- 汚物をペーパータオルなどで静かに拭き取り、ゴミ袋に入れる
- 汚物を拭き取り終わったら、塩素系消毒剤で浸すようにし、再度拭き取る
- 使ったペーパータオル、ビニール手袋、マスクなどはゴミ袋に密閉して捨てる
ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、口に入って感染することがあります。そのため、汚物は速やかに処理し、乾燥させないよう気をつけましょう。また、最初にご紹介したように、消毒用アルコールは効果が薄いことから、市販されている塩素系の漂白剤を使いましょう。キッチンハイターやピューラックスなどがおすすめです。
また、市販の漂白剤はそのままでは濃度が濃すぎるため、薄めて使いましょう。具体的には、0.1%の濃度にして使います。例えば、濃度5%のキッチンハイターなら、1Lの水道水に対してキャップ1杯弱くらいの量が目安です。洗浄液を作ったら、以下のような方法で消毒を行いましょう。
- トイレ、便器、浴槽などはペーパータオルなどに洗浄液をつけて拭き取る
- 便や吐瀉物で汚染された衣類や下着は洗浄後、洗浄液に30分程度つけ置きしてから洗濯する
- 飛沫がついた可能性のあるドアノブ、電話機、携帯電話などは、この溶液をさらに倍に薄めた液で拭き取る
このように、0.1%濃度の洗浄液を作っておけば、さまざまな部分の消毒に使えます。しかし、この溶液で手指など身体の消毒は行なえませんので、その点には十分注意しましょう。
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おわりに:ノロウイルスには次亜塩素酸系の薬剤が効果的
普段、我々がよく使う消毒用のアルコールはノロウイルスに対してあまり効果が期待できません。ノロウイルスに対して効果的なのは次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水、そして熱湯が挙げられます。
また、ウイルスに対するワクチンや特効薬などがないため、かかってしまったら対処療法で治すしかありません。そのため、ノロウイルスにはそもそもかからないような日頃の予防が何より重要なのです。
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