理科で液性を習ったとき、中性が一番安全で他に影響しない、というようなイメージを強く持った人も多いのではないでしょうか。そのイメージも間違いではありませんが、中性洗剤とは酸性やアルカリ性の洗剤のように化学反応を使わずに汚れを落とすタイプの洗剤です。
安全イコール効かない、ということではなく、中性洗剤も立派な洗剤です。今回は、中性洗剤の特徴や掃除方法について見ていきましょう。
中性洗剤の特徴は?どんな汚れに強いの?
序文でもご紹介したように、中性洗剤の「中性」とは液性が中性という意味です。液性は「pH」という0〜14の数値で表され、ざっくり分けるとpH0〜6が酸性、pH7が中性、pH8〜14がアルカリ性となります。また、中性から離れれば離れるほど酸性やアルカリ性の性質が強くなりますので、pH1は強い酸性、pH13は強いアルカリ性ということです。
ですから、中性洗剤はpHがだいたい7くらいだということです。液性が中性だということは、刺激が少なく、素材や手肌を傷めにくいという大きなメリットを持っています。酸性洗剤やアルカリ性洗剤のような強力な洗浄力と比べると、その洗浄力はやや劣りますが、素材を変色や変質させてしまうことなく、日々のちょっとしたお手入れやデリケートな素材の汚れにも安心して使える洗剤です。
中性洗剤は、使う用途に合わせて食器用・台所用・お風呂用・トイレ用・リビング用・洗濯用などさまざまな種類が販売されています。成分に大きな違いはありませんが、濃度が違ったり、それぞれの汚れに特化した成分が含まれていたりと、種類によって該当の場所で使いやすいような工夫がされています。
中性洗剤は日々のお手入れに向いていることから、よく使う場所ごとに揃えておくと、掃除に取りかかるハードルも下がっておすすめです。逆に、いくつも洗剤があると場所を取って嫌だという人は、万能に使えるタイプの中性洗剤を1本買っておくと良いでしょう。食器や衣類はもちろん、金属製のもの、塗装されたもの、プラスチックやゴム、大理石などの石材、陶器などさまざまな素材に使えます。
このようにさまざまな素材に中性洗剤が使えて汚れが落とせるのは、「界面活性剤」という中性洗剤の主な洗浄成分によるものです。界面活性剤とは、ざっくり言えば油を水に混ざらせることができる成分で、汚れを界面活性剤の分子で包み込み、細かくして浮かせ、水で洗い流せるよう混ざらせるのです。
こうした性質から、とくに軽い油汚れや皮脂汚れ、手アカなどの軽い汚れ落としに向いています。また、汚れが酸性かアルカリ性かパッと見てわからないときも、まずは中性洗剤を試してみて、落とせる部分は落としてしまう、というのも良いでしょう。「汚れにはまず中性洗剤」は、素材を傷めにくいという点から見ても間違いではありません。
中性洗剤を使った場所別の掃除方法は?
中性洗剤にはさまざまな種類があることは上記でご紹介しましたが、共通して含まれている洗浄成分は「界面活性剤」です。この主な洗浄成分の他に添加されている補助剤などと呼ばれる成分によって、お風呂の掃除がしやすい中性洗剤、トイレの掃除がしやすい中性洗剤など、さまざまな種類が販売されているのです。
洗浄力だけを見るなら、食器用洗剤だけで家中の基本的な掃除はできますが、リビング用洗剤は二度拭きがいらなかったり、コーティング成分が含まれていたりするなど、より掃除しやすい工夫がなされています。場所別に中性洗剤を揃える場合は、このように用途別に洗剤を選ぶと良いでしょう。
また、中性洗剤を使ってもいい場所、使ってはいけない場所は以下のようになっています。
- 使ってもいい場所
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- 汚れの液性に関わらず、軽い汚れやついたばかりの汚れを落としやすい
- まずは中性洗剤を使い、汚れが落ちにくければ酸性やアルカリ性の洗剤を使う
- 酸性にもアルカリ性にも弱い大理石、アルミなどの素材にも安心して使える
- 使ってはいけない場所
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- 塗装されていない木造面(白木)、壁紙、布製品はそのまま使うとシミになることも
- 薄めて目立たないところで試し、シミにならなければ使う(※原液を直接つけない)
- 頑固な油汚れ、鍋のこげつき、こびりついた尿石、衣類の血液汚れなどは中性洗剤では落としきれない
- 熱湯につけ置きして汚れを剥がしやすくする工夫をしたのち、酸性やアルカリ性の洗剤を使う
食器用の洗剤を使い回す場合はとくに泡立ちが良すぎるため、水で薄めてから使います。洗剤を使った後、家具や床などに洗剤の成分が残ったままだとシミや変色の原因になることがありますので、必ず最後に水拭きをしてしっかりと洗剤成分を拭き取りましょう。
中性洗剤の基本的な使い方は「原液のまま使う」「薄めて使う」の2種類です。それぞれ、以下のような場所で使いましょう。
- 原液のまま使う場所
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- お風呂掃除、シンクの掃除、トイレの便器など、汚れやすい場所で使うとき
- 汚れに直接洗剤を数滴たらし、汚れと洗剤を十分になじませる
- なじんだらスポンジなどでこすり落とし、仕上げに水でしっかり洗い流す
- 薄めて使う場所
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- 窓ガラス、網戸、サッシ、壁、天井、床、畳、キッチン、玄関、トイレ、浴室など
- バケツにぬるま湯を入れ、中性洗剤を数滴たらす
- 雑巾やフローリングワイパーのシートを入れてもみ洗いしても泡立たない程度
- 雑巾やシートを固く絞り、家中を拭き掃除する
- 仕上げに水拭きして完了
原液のまま使う場合は、刺激が少ないとはいえ、界面活性剤の働きで手や肌に必要な皮脂も落としてしまいやすくなっているため、ゴム製やビニール製の手袋を使いましょう。薄めて使うときもできれば手袋をしておいた方が安心です。もともと乾燥肌や敏感肌の人は、とくに手袋を忘れないようにしましょう。
では、最後に場所別の掃除方法を6ヶ所詳しく見ていきましょう。
食器の洗い方
食器は食べ物の残りカスやソースなどの汚れがついています。こうした汚れはキッチンペーパーや新聞紙でサッと拭っておきましょう。そして、洗い桶やバケツにお湯をはり、食器用洗剤を少量たらして軽くかき混ぜ、泡が立ったら食器を入れましょう。必要な洗剤の量は商品によっても変わりますので、必ずそれぞれの注意書きを確認しましょう。
また、水だと汚れが落ちにくいので、お湯を使うのがポイントです。このやり方は、食べ終わってすぐに洗う時間が取れないときや洗う食器が多いときに便利で、洗えず放置して汚れがこびりつくのを防ぎ、大量の洗い物をスムーズに進められます。大量の洗い物が出る飲食店などではこうしたつけ置き洗いがよく使われています。
ただし、長時間の放置はいけません。漆器や木製品も傷めてしまいますので、早めにしっかり洗うようにしましょう。また、お湯の量と汚れ具合によっても必要な洗剤の量は変わるほか、入れすぎると泡が残ってすすぎが大変になり、お湯や水がもったいないです。洗剤の入れすぎにも十分注意しましょう。
しっかり洗うときは、スポンジに原液をつけて洗います。手荒れを防ぐためにゴム手袋をして、スポンジにお湯を含ませてから洗剤を少量たらし、数回くしゅくしゅと揉んで泡立てます。先にコップやお椀など油分の少ないものから洗い始め、カレーやぎとぎとの油、焦げつきなどがあるものはできるだけ最後に洗います。
キッチン・シンクの洗い方
キッチンやシンクで気になる汚れといえば、水アカやぬめりです。水アカは水道水に含まれるミネラルと、食品に含まれるカルシウムが混ざることで発生し、ヌメリは生ゴミなどに雑菌が繁殖して発生します。そこで、中性洗剤の界面活性剤を使い、汚れを浮かせて分解し、こすり落としてしまいましょう。
具体的には、食器を原液で洗うときと同様、中性洗剤を原液のままスポンジにつけて泡立てます。そして円を描くように全体をこすり洗いし、終えたら洗剤を洗い流します。このとき、洗剤の成分が残っていると後々シミになってしまうことがありますので、よく洗い流しましょう。洗い流した後は、乾いた雑巾で水を拭き取っておくと水アカがつくのを防げます。
バスルームの洗い方は?
バスルームは毎日濡れては乾き、乾いては濡れる場所ですから、水アカや石鹸カス、シャンプー、皮脂汚れなどが溜まりやすいです。このような場合、お風呂用の泡タイプの中性洗剤とキッチンペーパーを使って掃除するのが良いでしょう。
まず、床や壁など汚れが気になる場所に中性洗剤をスプレーし、その上からキッチンペーパーをかぶせ、キッチンペーパーの上からもう一度スプレーし、30分ほど放置します。最後に洗い流すと、黒ずんだ汚れもキレイに落とせます。とくに汚れが気になる場合は、乾いた状態で洗剤をスプレーしましょう。乾いた状態の方が、中性洗剤の成分が汚れ全体に行き渡ります。
リビングの床を掃除するには?
リビングの床も、素材を傷めにくい食器用の中性洗剤で洗うことができます。この場合は薄めて使いますので、バケツ1杯の水に数滴の中性洗剤をたらし、かき混ぜて泡だてた水で雑巾を絞り、通常の拭き掃除をします。その後、真水で絞った雑巾でもう一度水拭きをします。
中性洗剤の成分が残るとシミや変色を引き起こすことがありますので、水拭きでしっかり洗剤の成分を拭き取りましょう。表面の皮脂汚れはこれですっきり落とせますので、床やフローリングのベタつきが抑えられます。また、少し手間はかかりますが、仕上げに乾拭きをするとサラサラした状態がキープしやすいです。
部屋の掃除はどうすればいい?
手アカや皮脂汚れのようにベタつく汚れではなく、軽いホコリや土ぼこりなどの場合、洗剤を含まない真水による水拭きだけでも落とせますので、ベタベタしていなければ水拭きだけでも構いません。それでも落ちない汚れや、ベタベタするタイプの汚れには中性洗剤を使いましょう。フローリング用や部屋用などには、二度拭きがいらないものもありますので、こうした中性洗剤を使うのも1つの方法です。
台所用洗剤を薄めてリビングの床と同じように使う場合、薄めて使うことになりますが、濃度が濃すぎるとヌルヌルして後始末が大変になったり、最悪の場合は素材が変質したり、変色してしまうこともあります。洗剤が多ければ多いほど汚れが落ちるというわけではありませんので、適量を守って使いましょう。
その他の洗い方
中性洗剤は、洗濯にも使われます。とくに、一般的な洗濯用洗剤はアルカリ性ですが、デリケートなおしゃれ着や色落ちが心配な衣類などは中性洗剤を使います。手洗いの場合は、表示に従って水やぬるま湯で薄めてから洗いましょう。洗濯機に手洗いコースやおしゃれ着コースがあれば、それらを使っても構いません。
化粧パフの洗浄にも中性洗剤が使えます。水で濡らしたパフに中性洗剤を1滴たらし、揉み込むように洗えば汚れが落ちます。その後、ぬるま湯や水で十分に洗い流したら軽く絞ってタオルなどで水気を取り、影干しして乾かします。
スニーカーなど布製の靴も、中性洗剤で洗えます。洗剤をブラシにつけて洗うほか、ぬるま湯で薄めて作った洗浄液につけ置き洗いするとキレイになります。洗い終わったらよくすすぎ、タオルや雑巾などでしっかり水気を取った後、風通しの良いところに干して乾かします。
おわりに:中性洗剤は素材を傷めにくい万能洗剤!汚れにはまず中性洗剤でもOK
中性洗剤は酸性やアルカリ性の洗剤とは異なり、液性が中性であることから刺激が少なく、手肌や素材を傷めにくいという性質を持っています。とはいえ、界面活性剤の働きで皮脂を落としてしまいますので、原液で使う場合はビニール手袋やゴム手袋をしましょう。
中性洗剤は場所別に揃えるのも、食器用洗剤を使い回すのもどちらもそれぞれにメリットがあります。自分のライフスタイルや部屋に合ったものを選びましょう。
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