私たちが普段、洗い物や掃除に使っている洗剤は、より正確に言えば「洗剤」「洗浄剤」「漂白剤」「研磨剤」などに分類されます。中でも漂白剤は、文字通り対象の汚れやシミなどを白くするという作用を持っています。
そんな役割を持った漂白剤にはどんな種類があり、どのように使い分ければ良いのでしょうか。今回は、漂白剤の種類と、種類別の用途についてご紹介します。
漂白剤って何?
漂白剤とは、汚れやシミなどの色素を化学反応で分解する働きを持つ物質のことを指します。つまり、ざっくり言うと色素を壊して取り除くことで、汚れやシミによって色がついてしまったものを元の白い色に戻す(漂白)するというものです。主に、洗濯では取り除ききれなかった汚れやシミを落とすのに使われます。
漂白剤にはさまざまな種類や特徴があり、中には使い方を間違えると繊維などの素材を傷つけてしまったり、人体に悪影響を及ぼしたりしてしまうものもあります。このような性質から、なんとなく使いにくいイメージを持たれやすいのですが、種類や特徴をしっかり把握し、上手に使い分ければ使い方自体がそれほど難しいわけではありません。
漂白剤は大きく分けると「酸化型」「還元型」の2つに分類されます。漂白剤とは色素を化学反応によって分解する働きを持つ物質のことだ、と最初にお話しましたが、理科で習う酸化・還元反応と全く意味は同じで、漂白剤から色素に酸素を与える反応で白くするタイプが「酸化型」、色素から漂白剤が酸素を奪う反応で白くするタイプが「還元型」と呼ばれます。
では、「酸化型」と「還元型」の漂白剤は、それぞれどんな特徴があり、どのように使い分ければ良いのでしょうか。種類別に詳しく見ていきましょう。
酸化型漂白剤の特徴とは?
一般的によく使われる漂白剤は、たいていこの酸化型漂白剤です。酸化型漂白剤は、さらに細かく「塩素系」と「酸素系」の2つに分けられます。
塩素系漂白剤(酸化型)の特徴とは?
塩素系の酸化型漂白剤には、概ね以下のような特徴があります。
- 色柄まで漂白してしまうほど、漂白力が強い
- 独特の刺激臭(ツンと鼻をつくニオイ)がある
- 除菌力が非常に高い
これらの特徴は、塩素系漂白剤に含まれる「次亜塩素酸ナトリウム」の特徴そのものでもあります。「次亜塩素酸ナトリウム」は、このように身近な漂白剤として使われているほか、カビ取り剤やパイプ洗浄剤、飲料水や温泉、プールの消毒剤などにも使われています。ただし、次亜塩素酸ナトリウムが塩素剤として使われているのは「液体タイプ」の塩素系漂白剤だけであり、固形や粉末のタイプには以下のような塩素剤が使われます。
- ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
- トリクロロイソシアヌル酸
- 次亜塩素酸カルシウム
このような塩素剤を使った固形や粉末タイプの塩素系漂白剤は、主に錠剤タイプのパイプ洗浄剤や哺乳瓶の除菌剤などに使われます。
酸素系漂白剤(酸化型)の特徴とは?
酸素系の酸化型漂白剤は、概ね以下のような特徴があります。
- 漂白力が塩素系漂白剤よりも穏やかで、色柄ものにも使える
- イヤなニオイ(刺激臭)がしない
- 塩素系漂白剤には劣るものの、除菌・消臭効果がある
代表的な酸素系漂白剤の成分は、ナチュラルクリーナーとしてもおなじみの「過炭酸ナトリウム」です。近年、「合成洗剤などと比べて自然環境にも優しい」と、重曹やクエン酸などと並んで人気のある掃除用品の1つです。過炭酸ナトリウムを愛用する人が多いのは、ひとえに漂白力が穏やかであり、刺激が少なく色柄ものにも使えることからどんな素材に対しても使いやすいという理由が挙げられます。
過炭酸ナトリウムは粒状ですから、過炭酸ナトリウムが含まれる漂白剤は必ず粒状タイプになります。液体タイプの酸素系漂白剤としては、「過酸化水素水」という、別名オキシドールとも呼ばれる液体が使われます。粒状の過炭酸ナトリウムと液体の過酸化水素は、どちらも酸素を与えて漂白・除菌・消臭をしますが、液性は大きく異なります。
具体的には過炭酸ナトリウムは弱アルカリ性ですが、過酸化水素水は酸性です。このような液性の違いは、使える衣類の種類に大きく影響します。例えば、弱アルカリ性の過炭酸ナトリウムは毛や絹に使えないのですが、過酸化水素水は酸性なので、毛や絹に対しても問題なく使えます。一方、弱アルカリ性の過炭酸ナトリウムは酸性の過酸化水素水と比べて油汚れに対する洗浄力が強いことから、毛や絹を除けば基本的に過炭酸ナトリウムの方がおすすめです。
このような性質の違いから、特殊なこだわりがなければ「ウールやシルクには、液体タイプの酸素系漂白剤」「ウール、シルク以外には顆粒タイプの酸素系漂白剤」と覚え、使い分けていきましょう。
還元型漂白剤の特徴とは?
還元型漂白剤は、最初にもご紹介したように「酸素を奪うことで汚れや色素を分解する」というタイプの漂白剤です。つまり、酸化型漂白剤とは全く異なる働きで色素や汚れを分解するため、酸化型漂白剤では全然落ちなかったシミが、還元型漂白剤であっさり落ちた、ということもありえます。還元型漂白剤が効果的なのは、以下のような汚れです。
- 衣類についた赤土、サビ汚れ
- 井戸水での洗濯が原因である、衣類の黄ばみ
- 塩素系漂白剤を使ったことが原因で起きた、プラスチック製品の黄ばみ
サビというのは、空気中で金属がどんどん酸素と結びついてできた「酸化された」タイプの汚れですから、酸素を奪って還元してやれば簡単に落とせます。赤土による泥汚れも同じように酸化鉄による汚れですから、還元作用で漂白することができます。井戸水で洗うと黄ばむのもこうした酸化の反応が原因ですから、還元型漂白剤を使えば白く戻せます。
このように便利な還元型漂白剤ですが、主な成分は「二酸化チオ尿素」や「亜ジチオン酸ナトリウム」で、水に溶けて弱アルカリ性になります。漂白力が高いため業務用に使われることが多く、色柄ものには使えません。白い衣類専用、と覚えておきましょう。逆に、白い衣類であれば綿・ウール・絹など、すべての繊維系衣類に使うことができます。
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おわりに:漂白剤には塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、還元型漂白剤の3種類がある
漂白剤とは、汚れやシミの色素を化学反応によって分解し、白くするという働きを持ったもので、主に洗濯では取り切れなかった汚れやシミに対して使われます。酸素を与えて白くするタイプを酸化型漂白剤(塩素系または酸素系)と呼び、酸素を奪って白くするタイプを還元型漂白剤と呼びます。
化学反応の違いから、酸化型漂白剤で落ちなかったタイプの汚れやシミが還元型漂白剤で落ちることもあります。汚れの種類で使い分けましょう。
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