浴室やキッチンなど、湿気の多い場所で気づくと発生している黒カビや赤カビは非常にやっかいなものです。見つけるたびにお風呂用洗剤やキッチン用洗剤とスポンジで掃除するのも大変ですよね。
そこで、もう少し楽なお掃除方法として、アルコールでカビを落とす方法をご紹介します。アルコールでカビを落とせる仕組みや掃除のやり方、注意点を一通り確認していきましょう。
アルコール(エタノール)でカビを落とせるの?
市販されている消毒用のアルコールは、厳密には「エタノール」という物質(アルコールの一種)です。結論から言えばエタノールでカビを落とす(除菌する)ことはできますが、カビが作る色素やカビ毒は落とせません。つまり、カビ本体には効き目がありますが、色素を落としたりカビの毒を消毒したりできるわけではないのです。
カビは、ざっくり言えば本体である菌糸と胞子からできています。この2つはエタノールで除菌(殺菌)することができます。
それは、エタノールがカビの細胞膜に作用してタンパク質を変性させ、カビを活動できなくさせるからです。消毒用エタノールは一般的に約70〜80%の濃度に調整されていますが、これは細胞膜にエタノールが浸透しやすい濃度といわれておいます。
ただし、エタノールでカビを落とせるのは「カビが物体に色をつけてしまうまで」です。カビが目で見ても大量に発生しているという場合、エタノールでカビ本体は殺菌できますが、カビがつけてしまった色素を落とすことはできません。
エタノールは色素を作り始めたくらいの小さなカビや、カビが目で見えるほどに繁殖してしまう前の予防に使うのが良いでしょう。
アルコールはどんなカビに効くの?
アルコール(エタノール)は、人間の住居でよく発生しやすい黒カビ・青カビ・赤カビのすべてに効果を発揮します。特に、濃度70%のエタノールを使うと、黒カビ・青カビ・赤カビのいずれも死滅するまで3秒以下という短時間で除菌できます。
しかし、濃度が半分の35%になると、黒カビは死滅するまで60秒、青カビは死滅するまで30秒かかってしまいます。
カビにアルコールを使うときは、水で薄めたり濡れた場所に使ったりせず、乾いた状態で使いましょう。
カビの除菌にアルコールを使うメリットって?
では、カビの除菌にアルコールを使うメリットにはどんなものがあるのでしょうか。具体的には、以下の3つのポイントが挙げられます。
- カビに対する殺菌効果が非常に高い
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- エタノールはカビのタンパク質を分解する効果があり、殺菌効果が非常に高い
- 純粋にカビを死滅させて退治するという効果の高さについては、非常に優秀
- さまざまな場面で使いやすい
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- カビは家中の至るところに発生するため、漂白剤が使えないこともある
- アルコールは蒸発するスピードが速く、吹きかけた場所を傷めたり劣化させたりしにくい
- そのため、漂白剤が使えない場所でも、アルコールなら使うことができる
- 家中のさまざまな場所でカビへの対処ができる
- カビ取りのための手間が少ない
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- 蒸発するのが速く、カビを死滅させるスピードも速いことから、掃除の手間を減らせる
- 時間がなければ、拭き取りまでせずシュッと霧吹きやスプレーで吹きかけるだけでも予防になる
エタノールは蒸発するスピードが速いことから、吹きつけた素材を傷めることが少なく、水拭きができない場所にも吹きつけられます。そのため、家中のさまざまな場所にアルコールを吹きつけるだけでカビ予防になります。
また、シュッと吹きつけるだけで拭き取る手間も乾拭きの手間もいらないエタノールは、掃除の手間を減らす意味でも重要なアイテムと言えるでしょう。
関連記事:無水エタノールを掃除で活用するにはどうすればいい?
カビを除菌・掃除する方法は?
カビをアルコールで除菌・掃除する方法は、ティッシュや乾いた雑巾などに消毒用アルコールをなじませ、拭き取るだけのシンプルなものです。
ここで注意したいのは、消毒用アルコールはスプレータイプのものが多いですが、目で見えるくらいのカビが発生している状態のカビに対して、いきなりスプレーしてはいけないということです。
これは、カビの本体(菌糸や胞子)がまだたくさんある状態でスプレーしてしまうとスプレーの勢いでカビが四方に飛び散ってしまい、他の場所で繁殖したり、鼻や口から呼吸で体内に入ってしまったりする可能性もあるからです。
最初はアルコールを含んだティッシュや布で拭き取り、ある程度カビが拭き取れてからスプレーするようにしましょう。
カビ退治にはどんなアルコールを選べばいいの?
カビ退治用のアルコールには、「消毒用アルコール」と記載されている、約70〜80%の濃度のアルコールを選びましょう。薬局などに行くと「消毒用アルコール」の他に「無水アルコール」という種類がありますが、これらにはそれぞれ以下のような違いがあります。
- 消毒用アルコール
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- 濃度:70〜80%
- カビを含め、細菌に対してもっとも除菌効果が高いアルコール
- 無水アルコールに水を混ぜて作ることもできるが、買ってしまった方が清潔で早い
- 無水アルコール
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- 濃度:100%(ほぼ100%)
- アルコールの純度が高く、吹きつけた直後に蒸発してしまう
- カビなど細菌に浸透して死滅させつくす前に蒸発してしまうため、消毒用アルコールよりも殺菌効果が低い
つまり、無水アルコールも消毒用アルコールのように殺菌作用自体はあるのですが、最初にご紹介したように、カビには3秒程度アルコールが浸透しないと死滅させることができません。
吹きつけるとすぐに蒸発してしまう無水アルコールでは死滅する前に蒸発してしまうことが多く、消毒用アルコールよりも殺菌効果が低くなってしまうのです。
消毒用アルコールとしてよく使われる商品には「パストリーゼ®」という濃度77%のものがあり、そのほかにもさまざまなものが販売されています。手に入るようなら一本常備しておくと良いでしょう。
消毒用アルコール、どんな場所に使える?
消毒用アルコールは、自然素材などの強い洗剤が使えない場所や、水拭きできない場所にも使えます。具体的には、以下のような場所にも使って構いません。
- 畳
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- 吸湿性があり、湿っぽい日が続くとジメジメしてカビが生えやすくなる
- 自然素材のため、漂白剤を使うと傷んでしまう
- カビを見つけたら早めにアルコールを含ませたティッシュで拭き取り掃除をする
- 掃除が終わったら、数時間ほど窓やドアを開けて換気し、湿気を取り除く
- 下駄箱などの収納空間
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- クローゼットや押入れ、下駄箱などは密閉されて空気がこもりやすく、カビが生えやすい
- 塗装された木材が使われていることが多く、アルコール除菌がおすすめ
- 中でカビが広がっていることもあるため、収納物を全部取り出してから掃除する
- 壁
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- 一般的なビニール製の壁紙であれば、漂白剤が使えるケースもある
- 壁紙が傷まないか心配、という場合はぜひアルコール除菌を
- 凸凹した部分があってもしっかりアルコールを触れさせられるよう、ティッシュにたっぷりアルコールを含ませて拭き取る
- 窓
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- 屋外との温度差で結露しやすく、ゴムパッキンなどにカビが生えやすい
- そのままにしていると窓枠やカーテンにまで広がっていってしまう
- 黒いシミのようなものを見つけたら、すぐアルコールを含ませたティッシュで拭き掃除する
- 日頃からカーテンにアルコールを吹きつけておくと、カビ予防にもなる
- 冷蔵庫などの家電
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- 冷蔵庫や加湿器、空気清浄機など水を扱う家電製品にもカビが発生する
- 食品を扱うような場所に漂白剤は向かないので、アルコール除菌がおすすめ
このように、そもそも素材が傷みやすい畳、収納空間、壁はもちろん、窓や家電など水拭きしにくい場所にもアルコールなら除菌掃除ができます。ぜひ、日頃の掃除にアルコールを加えてみましょう。
カビ掃除でアルコールを使うときの注意点は?
カビ掃除でアルコールを使うときは、以下の3つのポイントに注意しましょう。
火のそばで使わない
アルコール(エタノール)はお酒の主成分でもあり、引火性があります。つまり、火がつきやすいのです。万が一、木材の上に吹きかけたアルコールに引火してしまうと、燃え広がって家事になってしまうかもしれません。必ず、近くに火の気がないことを確認してから使いましょう。特に、家族に喫煙者がいる場合は近くでタバコを吸わないよう、気をつけてもらいましょう。
また、アルコールは無色ですから、子どもやペットが間違って飲んでしまわないよう注意しましょう。ジュースのペットボトルなどにアルコールを入れて保存しておくのも構いませんが、その場合は子どもやペットの手の届かない場所に置き、「アルコール」「きけん」などと明記しておきます。保存せず、毎回使い切ってしまえる量だけ買っておくのも良いでしょう。
揮発性が高い
アルコールは蒸発しやすい液体です。そこが掃除の際にはメリットになるのですが、密閉容器で保存しておかないとどんどん揮発していってしまいますので、余ったアルコールは密閉容器で冷暗所に保管しておきましょう。
また、一度開封したアルコールは使うたびに酸化して劣化していってしまいますので、使用期限内で使い切るよう注意しましょう。
カビの色素や毒は取れない
最初にご紹介したように、アルコールには漂白作用がないため、カビの本体を除菌することはできますが、カビが作り出す黒い色素を消すことはできません。
黒い色素をキレイに消したい場合は、まずアルコールでカビの本体をキレイに拭き取って殺菌した後、完全に乾いてから塩素系漂白剤で漂白し、カビの汚れを取り除きます。
このとき、アルコールが乾いていない状態で塩素系漂白剤を使わないよう気をつけましょう。また、水拭きできない場所には塩素系漂白剤を使えないため、自然素材や塗装された木材などに黒いカビのシミができてしまうと消すことができません。
このような素材には、日頃からこまめにアルコールを吹きかけてカビ予防をしておくことや、カビに気がついたらすぐに拭き掃除をしておくことが重要です。
その他に注意すべきこと
重要なのは上記の3つですが、その他にも気をつけておくべきことがあります。以下のようなポイントにも注意しましょう。
- アクリル、スチロール、革製品、ニスやワックスが塗られた床や家具には使えない
- アルコール耐性がないものには使えないため、心配な場合は確認する
- 有毒なガスが発生することがあるため、薬品同士を混ぜないよう注意する
- 消毒薬として手肌に使用する場合、頻度が高いと手荒れを起こすこともある
- アルコールは水分を奪う性質があるため、特に肌が弱い人は注意しながら使う
- インフルエンザウイルスには有効だが、ノロウイルスなどには効かない(ノロウイルスには塩素系漂白剤が有効)
アルコール(エタノール)は非常に多くの場所に使えますが、上記のように使えない素材もありますので注意しましょう。また、他の薬品と混ぜてはいけません。
水分を奪う性質から肌荒れを起こすことがありますので、肌が弱い人はビニール手袋やゴム手袋などをして使いましょう。
関連記事:酸性洗剤の種類や特徴と「まぜるな危険」の理由とは?
おわりに:カビ本体はアルコールで除菌できるが、色素は消えないので注意!
消毒用アルコール(消毒用エタノール)はカビの細胞膜に浸透してタンパク質を変性させ、殺菌する効果があります。そのため、アルコールでカビの本体(菌糸や胞子)を除菌することはできます。
しかし、カビの作り出す色素やカビ毒は取り除けないので注意が必要です。消毒用アルコールは自然素材などさまざまな場所に使えますが、使えない素材もあることや、他の薬品と混ぜないように注意しましょう。
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