夏の肺炎を引き起こすトリコスポロンってどんなカビ?

夏型過敏性肺炎の原因になるカビハウスダスト(ダニ・カビ)

カビには、人にとって有益なものから人には有害なものまでさまざまな種類があります。身近なものでは浴室に多い黒カビ、食品によくはえる青カビや白カビ、味噌や醤油を作るコウジカビなどがよく知られています。

今回は、中でも人体に有害な「トリコスポロン」というカビについてご紹介します。夏になると毎年体調が悪くなる、咳が出る、という人はぜひチェックしてみてください。

トリコスポロンとは?

トリコスポロンとは、「夏型過敏性肺炎」を引き起こすとして近年注目されているカビです。トリコスポロンは他の多くのカビと同じように湿気の多い場所を好みますので、主にエアコン・浴室・洗面所・キッチンなどで繁殖しますが、ときには押入れやクローゼット、ベッド、布団などで繁殖することもあります。

「夏型過敏性肺炎」は6月ごろから10月ごろまで、夏期をピークに発症するためこの名前がついていますが、ちょうどその時期はトリコスポロンの活動開始である「温度が20℃以上、湿度が60%以上」を満たす環境が日本に多くなってくる時期でもあります。さらに、高温多湿になるほどよく繁殖し、胞子をたくさん飛ばすことから、特に注意が必要なのは真夏なのです。

本来、トリコスポロンの繁殖場所は古くなった木や畳・カーペットなどであることから、以前は古い住宅でよく見られました。しかし近年では、マンションやアパートの気密性の高さがカビの好む高温多湿の状態を作ってしまうため、さほど古くないマンションやアパートでもトリコスポロンの繁殖が見られます。

例えば、日本経済新聞が2010年に行った調査によれば、「築20年以上の木造一戸建て」「築7年以上のアパート」「団地の1〜3階」で暮らしている人が発症しやすいと報告されています。また、比較的高温を好むことから暖かい地域での発症例が多いのですが、これも近年の住宅の気密性の高さや温暖化の影響で、東北地方などにも発症例が広がっていることに注意が必要です。

屋内でトリコスポロンが発症しやすいのは、湿気が多く日当たりや風通しが悪い場所です。具体的には、以下のような場所が挙げられます。

  • エアコン内部
  • キッチンの水回り
  • 洗面所
  • 浴室、脱衣所
  • 洗濯機置き場近くの床
  • 北側の押入れや窓のサッシ周り
  • 畳の下の木が腐っている場合

エアコン内部は夏に冷房をよく使うことから、外気温との温度差が激しく結露しやすい状態になっています。すると、空気中から吸い込んだホコリやゴミ、カビの胞子などが溜まっているフィルターと合わせ、カビの格好の繁殖場所となってしまうのです。さらに、一年を通してエアコンをよく使う家庭の場合、室内の条件によっては季節に関係なく一年中カビに注意が必要となることもあります。

トリコスポロンの胞子は3〜10ミクロンと非常に小さいため飛び散りやすく、しかも肺胞の中まで吸い込まれやすいため、肺炎を引き起こしやすいのです。発症しやすさは住宅の環境や地域の気温の高さ・低さにも左右されますが、特に、長時間住宅内にいることが多い専業主婦などが夏型過敏性肺炎を発症することが多いとされています。

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トリコスポロンが引き起こす夏型過敏性肺炎って?

夏型過敏性肺炎とは、その名前どおり夏に多く見られる肺炎です。夏になるとよく風邪をひく、咳がいつまでも出る、といった症状が出る人は、もしかしたら気づかないうちに夏型過敏性肺炎にかかっているかもしれません。トリコスポロンをはじめ、鳥の糞やホコリ、その他の雑菌などを繰り返し吸い込んでいるとその物質に対してアレルギー反応を起こし、最終的に肺炎を引き起こすという「過敏性肺炎」の一種です。

夏に発症するものの、秋には症状が消え、数年にわたって同じ季節に同じ症状を繰り返すという傾向があります。過敏性肺炎には何十種類ものタイプがありますが、その4分の3を占めるのがトリコスポロンを原因とする夏型過敏性肺炎なのです。繰り返し吸い込むうちにトリコスポロンがアレルゲンとなり、トリコスポロンを吸い込むたびに症状が現れるようになります。

多くの人はアレルゲンであるカビを吸い込んでから4〜6時間以内に咳・痰・発熱・だるさなどの軽い風邪のような症状を引き起こします。特に初めて夏型過敏性肺炎を発症した場合、夏の終わりごろに咳や38℃以上の発熱が起こりやすい(急性夏型過敏性肺炎)のですが、この段階ではX線検査でも影が出にくく、肺炎と気づかれないことも少なくありません。

しかし、単なる風邪だと思って放置し続けているとどんどん症状が重くなり、次第に息切れや呼吸困難、チアノーゼなど、肺炎の症状が現れます。環境から離れればこの症状は8〜12時間程度でおさまり、数日から10日で治ってしまいます。しかし、環境を変えない限り症状はずっと続いてしまいます。

このように環境から離れれば症状はおさまることから、「自宅で4〜6時間過ごすと症状が現れるのに、外出するとおさまる」といった特徴が見られます。在宅時間が長いほど症状が出て、外出時間が長いほど体調が良くなるため、旅行や出張などでホテルや旅館に泊まると症状がほとんど出ず、治ったように感じる人も多いようです。

他にも、会社に出社すると調子が良くなり、家に帰ると咳が出るという場合も夏型過敏性肺炎の可能性が高いと考えられます。しかし、病院でも風邪と診断されることが多く、抗生物質などで一時的に症状は改善されるため、治ったと誤解してしまう人も少なくありません。「毎年、夏に同じような症状の風邪を引く」「家を出ると調子が良くなり、帰ると風邪の症状が出る」という人は、ぜひ一度呼吸器科などの専門医に診察を受けてみましょう。

検査では白血球やCRPなどの炎症反応を見たり、肺活量など肺の機能を見たり、胸部のレントゲンを撮影したりします。治療としてはまず、アレルゲンとなるトリコスポロンを取り除くことが大前提ですが、それだけでは症状が改善しないという場合、薬物療法としてステロイドなどを投与することもあります。

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夏型過敏性肺炎は繰り返していると重症化するって本当?

夏型過敏性肺炎の症状は風邪に似ていますが、実際にはアレルギー反応が起こっています。毎年この肺炎を繰り返していると、夏型過敏性肺炎は慢性化し、肺が線維化して呼吸機能がだんだんと低下してきます。この頃になると、熱は微熱程度になって咳だけが残るケースが多くなりますので、今度は喘息と思い込んでしまう人も多いようです。

さらに悪化すると肺が萎縮し、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなり、呼吸不全から命に関わることもあります。自覚症状が軽いからと甘く見ることなく、早めに専門医の診察や検査を受けておきましょう。特に喫煙者の場合は重症化が早い傾向にありますので、早めに受診するとともに、禁煙することが大切です。

夏型過敏性肺炎を予防するにはどうすればいい?

夏型過敏性肺炎の厄介なところは、病院で薬をもらって一時的に症状が治まったとしても、それはアレルギー反応を無理におさえつけているだけで、自宅にトリコスポロンが異常繁殖している限り、症状を繰り返してしまうところです。もちろん、咳や発熱がひどい場合は体力を消耗してしまうため、薬物治療も必要ですが、根本的な原因を取り除かない限り治療になりません。

最も効果的な治療法としては、転居によって清潔な住宅に移ることや、カビがはえてしまった場所をまるごとリフォームしてしまうことです。実際に、症状がひどく生命に関わると判断された場合など、医師の指導で転居が必要になることもあります。とはいえ、軽症の場合やカビがまだそれほど多くない場合には、わざわざ転居やリフォームをしなくてもカビを除去し、再発防止に努めるだけで済むことがほとんどです。

最初にご紹介したように、トリコスポロンは本来、暖かい地方の古い家屋に繁殖しやすいカビです。しかし、マンションやアパートなど住宅の気密性が高くなったことにより、トリコスポロンの繁殖に適した温度や湿度が寒冷な地域や比較的新しい家屋内でも保たれるようになってしまったのです。特に、日当たりや風通しの悪い水回り、北側に位置する押入れやサッシ、エアコンの内部などを重点的にチェックしましょう。

もしカビが発生していたら、消毒用アルコール(濃度70〜80%のエタノール)をいらない布に含ませ、静かに拭き取ります。アルコールスプレーをそのまま吹きつけたり、勢いよく拭きすぎたりするとカビの胞子が舞ってしまいますので、注意しましょう。また、掃除する際にはマスクと手袋をつけ、カビの胞子を吸い込んだりカビのついた手で顔や身体を触ったりしないよう気をつけましょう。

カビを除去した後は、場所別に以下のような再発予防対策を行うのがおすすめです。

押入れやクローゼット
  • 湿気が溜まらないよう、晴れて湿度が低い日などに定期的に扉を開けて換気する
  • 高い場所は乾燥しやすくカビがはえにくいので、衣装ケースなどをできるだけ高い位置に置いておく
エアコン
  • 冷房で結露してカビが繁殖することが多いため、冷房を使ったら30分〜1時間ほど送風運転して内部を乾燥させる
  • 週に一度はフィルター掃除をすると良い
  • エアコンをつけているときは窓を開けない人が多いが、ときどき窓を開けて換気し、カビの胞子を外に出すことも重要
  • 季節の変わり目でしばらく使わないときなどは、必ず最後の日に送風運転で内部を乾燥させる
  • ※既に咳が出ていて内部でカビが繁殖していると思われる場合は、専門の業者に依頼する
浴室
  • 入浴後は、水が溜まりやすい凹凸のある床や壁をタオルで拭き取り、乾燥させる
  • 浴室乾燥機や換気扇があれば回し、しっかり乾燥させることが重要
布団
  • 晴れた日にはできるだけ天日干しを行い、干した後は表面にやさしく掃除機をかけてホコリを吸い取る
  • 忙しくて天日干しまではできないという場合、日当たりの良い部屋に置いておく(※椅子などにかけて空気を通すとベスト)
  • 普段から床とふとんの間にすのこを敷き、風通しを良くするのも効果的
カーテン裏
  • カーテンに隠れた部分の窓には湿気がこもりやすいので、こまめに掃除する
キッチンや水回り
  • 日頃からこまめに水はねを拭き取り、水分をそのままにしておかない
  • 水はね用の雑巾や古いタオルをそばに置いておき、気づいたら拭き取る

特に気をつけておきたいのがエアコン内部に繁殖するカビで、見えにくいことから気づかないうちにカビがはえていることも多いです。ですから、何年もエアコン内部の掃除をしていないという場合はまず専門の業者に依頼し、エアコン内部をすっきりキレイにしてもらいましょう。その後、冷房を使った後には必ず送風運転で乾燥させれば、カビの繁殖しにくい環境にできます。

他の予防対策も、いずれもちょっとした手間や工夫でできることばかりです。気づいたことから始め、カビによる肺炎を防ぎましょう。

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おわりに:トリコスポロンは高温多湿を好み、アレルギーから肺炎を引き起こす

トリコスポロンも他の多くのカビと同じように、高温多湿の環境を好みます。特に、温度20℃以上、湿度60%以上の環境であればよく繁殖して胞子をたくさん飛ばすことから、夏にアレルギーを引き起こす人が多いのです。

夏型過敏性肺炎は放置しておくと肺が線維化し、呼吸機能がどんどん低下してしまいます。そこで、根本的な原因であるトリコスポロンを除去するとともに、日頃からカビ予防対策を行いましょう。

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