消毒用の液といえば、一般的にすぐ思い浮かぶのはさまざまな施設にもよく置かれている「消毒用アルコール」でしょう。取扱説明書や成分表示などを見るとわかりますが、消毒用アルコールには水分が少し含まれています。
この消毒用アルコールの原液とも言える、水分が含まれていない純粋なアルコールのことを「無水エタノール」と言います。これを掃除で活用するためには、どんな方法があるのでしょうか。
無水エタノールって何?
無水エタノールとは、序文でもご紹介したように水分を含まない純粋な(純度の高い)アルコールのことです。正式名称を「エチルアルコール」と言い、お酒などに含まれるアルコールとも仲間です。厳密には「濃度99.5%以上のエタノール」と定義されていて、ごくわずか水分を含むこともありますが、ほぼ純粋なアルコールと考えて問題ありません。
無水エタノールに対し、水分を加えて70%〜80%の濃度に調整したものが「消毒用アルコール」として使われているエタノールです。これは、この濃度で除菌効果が最も高くなるためで、無水エタノールの状態では手指にかけても濡れている感覚がないほど揮発性が高すぎて、除菌効果は消毒用アルコールと比べると低くなってしまうのです。
しかし、この揮発性が非常に高いという性質は、水が苦手な電化製品や精密機器の掃除に最適なのです。パソコンの配線やホコリの溜まりやすい排気口、ディスプレイの裏面などはもちろん、ディスプレイやキーボードの掃除をしても水滴が残らないため、乾拭きいらずで手アカやホコリをキレイに拭き上げることができます。
また、油汚れにも強いので、キッチンや換気扇、ガスコンロの五徳などの汚れ落としにも使えます。除菌はしたいけれど水分を残したくない、という電子レンジの内側や冷蔵庫の内部にも最適です。さらに、シールをはがした後にベタベタしてしまったときも、布に無水エタノールを染み込ませて拭けばベタベタを取り除けます。
上記のように直接無水エタノールを使う方法のほか、消毒用に使いたい場合は水と無水エタノールを8:2の割合で混ぜてスプレーボトルなどに入れ、気になるところに吹きかけて汚れを拭き取ったり、布に含ませて拭き掃除をしたりするのもおすすめです。無水エタノールほどではありませんが、消毒用エタノールもすぐに蒸発しますので、二度拭きの必要はありません。
無水エタノールを使った掃除方法とは?
無水エタノールで掃除をするためには、以下のようなアイテムを準備しましょう。
- 無水エタノール
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- ドラッグストアや、インターネットで手に入れられる
- 乾いた布
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- 無水エタノールを染み込ませて拭くための布
- 空のスプレーボトル
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- 無水エタノールを入れてスプレーしたり、消毒用エタノールを作ったりする
- ビニール手袋
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- 無水エタノールは、皮脂を溶かしたり水分を蒸発させたりするため、直接触ると肌荒れにつながる
- 肌が弱い人に限らず、誰でも掃除するときにはビニール手袋やゴム手袋を忘れずに
では、実際に無水エタノールを使って掃除する方法について、「テレビやパソコンなどの電化製品」「キッチン・窓ガラス」「シールや落書き」「トイレ・お風呂」の4つに分けて見ていきましょう。
テレビやPCなどの電化製品を掃除する方法
前章でご紹介したように、無水エタノールは蒸発しやすいという性質から水が使えない電化製品の掃除にうってつけです。また、エタノールの性質や揮発性から感電の心配もなく、安全に掃除ができます。とはいえ、通電部分を直接触って感電してしまうのを防ぐため、電化製品やPCの掃除をするときには必ず電源を切り、コンセントを抜いてから行いましょう。
- 無水エタノールを布やクロスにとる
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- 濡れた感覚がしないためつい多く含ませがちだが、表面が軽く濡れたことが視認できればOK
- 滴るほど大量に含ませると結局は水分になってしまうため、含ませすぎに注意する
- 拭き掃除をする
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- 無水エタノールを含ませた布で汚れた部分を中心に拭き取る
- キーボードの隙間、リモコンのボタンの間など細かい部分は綿棒に無水アルコールを含ませて拭く
スマホの手アカ汚れなどに使う場合は、電源を落とさなくても構いません。無水エタノールが機械の内部にまで染み込まないよう、気をつけて拭きましょう。リモコンの汚れも多くは手アカですから、消毒用アルコールよりも油分を溶かし出す力が強い無水エタノールで落とせばスッキリキレイにできるのです。
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キッチン・窓ガラスを掃除する方法
キッチンでは、パソコンや電化製品の掃除と同じように、無水エタノールを含ませた布で電子レンジや冷蔵庫の内部を拭き取ります。油汚れなどでベタついている場合は、多めにエタノールを染み込ませた布を汚れに直接当て、しばらく置いてから拭き取ります。
さらに油汚れの多い換気扇やガスコンロには、直接無水エタノールを吹きかけてから乾いた布で拭き取りましょう。スプレーするときは目や皮膚につかないよう、十分注意してください。シンクや調理台の気になる汚れや除菌に使うときは、消毒用エタノールを作ってスプレーしましょう。
また、無水エタノールは水滴が残らないことから、窓ガラスの掃除に使うと跡を残さずピカピカに拭き上げられます。とくに繊維くずが残りにくい布(マイクロファイバークロスなど)で拭き取るのがポイント。汚れが目立つ場所にはあらかじめ無水エタノールをスプレーしてから拭き取ると良いでしょう。
シールや落書きを掃除する方法
子どものいる家庭では、シールを貼ったり落書きしたりと子どもの手でさまざまな場所が汚されてしまいがちです。このようなシールをはがした後のベタつき、サインペン・ボールペン・アクリル塗料の汚れなどにも無水エタノールは効果的です。
シールのベタつきには無水エタノールを直接たらすか、布を当てて他の部分にかからないようにしながら、ふやけるくらいたっぷりと無水エタノールを染み込ませましょう。しばらく浸透させてから、乾く前にサッと拭き取るのを数回繰り返します。それでもキレイにならないときは、歯ブラシに無水エタノールを染み込ませてベタつきの上からこするとキレイにはがせます。
壁や家具に落書きしてしまった絵の具や油性インクなどの汚れにも、無水エタノールは便利です。ただし、無水エタノールは洗浄力が強力すぎることから、デリケートな素材には向いていません。とくにラッカーやニス仕上げの家具、フローリングなどにはダメージが残ってしまう可能性がありますので、使わないよう注意しましょう。
トイレ・お風呂を掃除する方法
無水エタノールは、カビ対策にも役立ちます。例えば、浴槽のタイルの隙間などに赤いヌメヌメした汚れがあるのを見ることは多いですが、これは「ロドトルラ」という雑菌が繁殖したものです。この菌は水分だけで増殖できると考えられる上、ロドトルラが発生した後には黒カビが発生しやすくなります。ですから、早めの対策が重要なのです。
とはいえ、掃除方法はいたって簡単で、無水エタノールと水を8:2の割合で混ぜ合わせた消毒用アルコールを作り、スプレーボトルに入れて気になる部分に吹きつけていくだけです。すぐに蒸発しますのでわざわざ拭き取る必要もなく、気がついたときにサッとできて手間もかからない手軽かつ効果的なカビ対策と言えます。
無水エタノールを使うときの注意点は?
上記のように、さまざまな場所の掃除に便利な無水エタノールですが、使うときには以下のようなポイントに注意しましょう。
- 換気しながら行う
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- 揮発性が高くアルコール分も濃いため、吸いすぎると気分が悪くなる人も
- 掃除中は必ず換気を十分に
- 火気厳禁
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- 引火性が高いので、周囲で火を使わないよう気をつける
- 静電気がおきても引火することがあるので、家電に使うときは電源を落とすのを忘れずに
- ガスコンロを掃除した後は、完全に乾燥したのを確認してから火をつける
- 乾燥肌の人はとくに注意
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- エタノールは油分をよく溶かす性質があり、肌に必要な油分も溶かして肌荒れにつながってしまう
- 使うときはビニールやゴムの手袋をするほか、乾燥肌の人はとくに肌につかないようよく注意する
- 目に入らないよう注意する
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- 目などの粘膜に入ると非常に危険なため、高い場所のものは下ろしたり、布に染み込ませて拭き掃除したりする
- デリケートな素材には使わない
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- 白木などの生木、ニスなどの油性コーティングは傷んだりコーティングが剥げたりする
- 発泡スチロールや革製品は変性・変色する可能性があるので使わない
- 消毒用に使うときは80%にする
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- 消毒用アルコールとして使いたいときは、8:2の割合で水を混ぜる
- 混ぜた後は、スプレーボトルなどにつめて使うと良い
無水エタノールは、その性質上揮発性が高く、引火しやすく、油分を溶かす力が強いという面があります。そのため、過剰に吸い込んでしまったり、皮膚についたり、静電気などの火花が起こったりするのも危険です。換気したり、電化製品から火花が飛ばないよう電源を切ったり、皮膚につかないよう注意したりするのを忘れないようにしましょう。
また、揮発性が高いため十分な消毒効果が出る前に蒸発してしまったり、水分がほとんどないために菌の内部にまで染み込みにくかったりといった理由から、消毒効果は消毒用アルコールよりも低いとされています。ですから、目的が消毒である場合は必ず8:2の割合で水を混ぜ、80%くらいの濃度になるように薄め、スプレーボトルなどに入れて使いましょう。
おわりに:無水エタノールは電化製品や油汚れに強い
無水エタノールは、99.5%以上の濃度を誇るほぼ純粋なアルコールのことです。これを70〜80%に薄めると「消毒用アルコール」となり、最も除菌効果が高い濃度となります。
無水エタノールは揮発性が高く油を溶かしやすいことから、水が使えない電化製品や電子レンジの油汚れ、シールのベタつきや油性ペン汚れなどに高い効果を発揮します。しかし、そのため換気したりビニールやゴムの手袋を忘れずに使ったりしながら掃除しましょう。
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