一口にカビと言っても、その種類はさまざまです。一説によれば地球上に生息する微生物のうち、約36%がカビの仲間とされているほど、人間にとって最も身近な微生物の一つです。では、家にはえるカビにはどんなものがあるのでしょうか。
今回は、カビの種類を目で見てわかる色で分け、その特徴や性質についてご紹介します。また、はえる条件や健康被害についてもご紹介しますので、ぜひチェックしてください。
カビの種類は色で分けるとどんなものがある?
カビの色には、黒・赤・青・緑・黄・白の6種類があります。それぞれの色のカビについて、その特徴や違いを詳しく見ていきましょう。
黒カビってどんなカビ?
黒カビは室内のどこにでも存在し、カビの中でも最も一般的なものの一つです。特に代表的な黒カビは、正式名称を「クラドスポリウム」といい、本来はどこにでもある土壌菌で、空気中にも多く漂っています。アルコールや熱に弱いため、カビの中では比較的除菌が手軽な部類に入ります。
しかし、どこにでも存在するカビなので、発生する場所も非常に多岐にわたり、結露のたまりやすい場所や、風通しが悪く空気のよどんでいる場所など、家の中のさまざまな場所で発生してしまいます。黒カビそのものに毒性はありませんが、エアコンの内部に繁殖して胞子が空中に舞うと、それを吸い込んだ人がアレルギーや気管支炎を起こす可能性があります。
黒カビの厄介なところは「根」を張ったり、乾燥すると簡単に胞子が飛び散ってしまったりするところです。一度発生したら「根」まで含めてしっかり除菌しないと、再発生したり別の場所にはえたりしてしまいます。黒カビを除菌するときは、徹底的に除菌しましょう。
赤カビってどんなカビ?
赤カビとは「フザリウム」と呼ばれる植物病原菌の一種です。植物病原菌という分類のとおり、植物を枯らしたり腐敗させたりする作用を持っていて、トマトやサツマイモなどの野菜が枯れてしまう「赤カビ病」はまさにこの「フザリウム」が原因です。収穫した野菜にはえることもありますが、身近なところで言えば古くなったパンやご飯に発生することが多いです。
フザリウムは植物を枯らすだけでなく、人間や家畜にとっても有毒な「マイコトキシン」というカビ毒を産生します。マイコトキシンは重篤な中毒症状や免疫不全を引き起こすため、非常に毒性が強いカビ毒と言えます。食材に少しでも赤カビが発生したと見られる場合、絶対に食べずに捨てましょう。
お風呂などに発生するぬるぬるとした赤い物質は、フザリウムではなく「ロドトルラ」と呼ばれる細菌で、カビではなく酵母菌の一種です。こちらは全く毒性がありませんが、このロドトルラをエサに黒カビが発生してしまいやすいので、ロドトルラも発見次第除菌しておくのが良いでしょう。
青カビってどんなカビ?
青カビは、黒カビと並んで日常生活の中でよく目にするカビの一つです。こちらもやはり空気中に常に漂っていますので、パンやお菓子などを放置していると真っ先にはえてしまいます。青カビそのものに毒性はありませんが、青カビがはえているということは赤カビなどの有毒なカビも目に見えないレベルではえていると考えた方が良いでしょう。
また、小さなカビであっても周囲に菌糸を広げている場合がありますので、お餅などでカビのはえた部分を削って食べるなどという場合には十分注意しましょう。青カビは抗生物質の原料「ペニシリン」を含むほか、ロックフォールやゴルゴンゾーラといったチーズの発酵にも使われていて、人間にとって有益なことも多いカビです。
関連記事:青カビ(ペニシリウム)の特徴とは?
緑カビってどんなカビ?
青カビとよく似た緑色の粉っぽいカビですが、青カビとは全く異なる「トリコデルマ」というカビです。一般的には「ツチアオカビ」とも呼ばれ、畳の裏や木材など、家の中でも湿気の多いところでよく見られ、木材の劣化や腐敗を引き起こします。さらにトリコデルマはカビ毒も発生させますので、大量に吸い込むと腹痛や下痢などの中毒症状が起こる可能性もあります。
鉄筋コンクリート造のマンションではあまり馴染みがないカビですが、木造住宅ではよく梅雨時に発生します。中には毎年発生する家もありますので、きちんと除菌が必要です。
関連記事:畳のカビの掃除方法と予防方法とは?
黄カビってどんなカビ?
オレンジや黄色のカビは、湿気を好む他のカビと少し生態が異なり、乾燥を好みます。このカビは「カワキコウジカビ」という正式名称を持ち、ガラス・フィルム・刀剣などの場所に発生します。カメラのレンズに曇りを発生させるカビもこのカワキコウジカビです。空気中の湿気を養分とし、乾燥した場所に発生します。性質上、青カビなどが繁殖できない保存食などにも発生することがあるため、注意が必要です。
白カビってどんなカビ?
食品や建材など、至るところに発生するふわふわとした白カビは青カビや黄カビの仲間であることがほとんどです。ただし、一見よく似たカビであっても性質が全く異なるものも多く、中には強いカビ毒を産生するものもありますので、他のカビと同じように吸い込まないような注意をしましょう。
カマンベールチーズやブリーチーズを作るのに使われるカビも「白カビ」と呼ばれますが、こちらは生物学的には青カビの一種であり、前述の白カビとは全く性質が異なるものです。
関連記事:白カビはどうやったら除去・掃除できるの?
カビがはえる条件とカビ対策のポイントは?
カビの発生に必要な条件は、以下の5つです。
- 栄養分
- 酸素
- 温度
- 湿度
- 時間
このうち、酸素や温度の条件を取り除くのは現実的ではありません。酸素がない場所や、温度が極端に高い場所、低い場所では人間も生きられないからです。また、カビはプラスチックやビニールクロス、畳、ホコリなど実にさまざまなものを栄養分としてしまいますので、ほとんど取り除くことは不可能と考えて構いません。
そのため、人間がコントロールできる部分は「湿度」と「時間」の2つです。つまり、カビの好む高い湿度の環境を作らないこと、定着するための時間を与えないということです。日常的に換気を行い、こまめに掃除をしましょう。最近ではカビ防除剤や抗菌コートなどの薬剤でカビをはえにくくする方法もありますが、これらの処理をすれば絶対にカビがはえない、というわけではありません。こまめな掃除や換気を忘れないようにしましょう。
カビが原因で起きる健康被害の種類は?
カビが原因で起きる健康被害には、感染症・アレルギー・中毒の3種類があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
カビが引き起こす感染症にはどんなものがあるの?
カビが引き起こす感染症として有名なものには、以下の5種類があります。
- 気管支肺アスペルギルス症
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- 疲労が溜まるなどして免疫力が落ちている人がカビ(アスペルギルス・フミガーツス)を大量に吸い込むとかかることがある
- 気管支から肺にカビが入り、肺や気管支にカビがはえてしまう
- 過去に肺の病気にかかり、空洞部分があるなどでかかりやすくなる
- 世界中でも感染例が多いカビの感染症で、無症状の場合もあるが、咳・発熱・呼吸困難などが起こる場合も
- 発生源は布団・カーペット・エアコン内部など
- クリプトコッカス症
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- クリプトコッカス菌は、土壌中に広く分布しているカビの一種
- 鳩のフンに含まれる成分を栄養にし、土中に増殖する。乾いたフンとともに舞い上がった粉塵を吸い込むと、肺の中に菌が取り込まれる
- 健康な人ではほとんど発症しないが、HIVの患者や高齢者など、免疫力が大きく低下している人では簡単に感染・発症する
- 免疫機能が正常な人でも、まれに感染することがある
- 症状が出ない場合もあるが、咳・胸痛・呼吸困難を訴えることもある
- 髄膜に感染して髄膜炎を引き起こすと、頭痛や錯乱などの症状が出ることも
- 癜風(でんぷう)
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- 癜風菌は皮膚の常在菌であり、身体に普通に存在している
- マラセチアという真菌が原因で発症し、背中や胸に茶色や白のカサカサした発疹ができる
- 汗を書きやすい人、脂っぽい人などに多く発症し、感染力は弱いものの、ごくまれに他の人に感染することもある
- カンジダ症
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- カンジダ菌は、皮膚・消化管・膣内などに存在する常在菌で、普段は悪さをしない
- 身体が弱ったときや、抗生物質の使いすぎなどで異常増殖し、皮膚や口、膣などに感染症を引き起こす
- 口の中に白いカスのようなものがたくさんついたり、女性では白いおりものが多くなってかゆみが出たりする
- 放置していると血液に乗って心臓・脾臓・腎臓・目などに広がることも
- 重症化すると失明したり、死に至ったりすることもあるため早めに治療が必要
- 水虫(足白癬)
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- 白癬菌というカビの一種が、皮膚の角質層に寄生することで起こる
- 水虫に感染した人から剥がれ落ちたアカを裸足で踏んだりすると、人から人へ感染する
カビが引き起こす感染症で有名なものには、カンジダ症や水虫などがあります。カンジダ菌は常在菌ですので、通常は人体を害するものではありませんが、免疫力の低下や抗生物質の影響などで常在菌のバランスが崩れると異常増殖し、カンジダ症を発症することがあります。水虫は重篤な症状に発展することはあまりありませんが、人から人へ感染することも多い厄介な皮膚疾患です。
カビが引き起こすアレルギーにはどんなものがあるの?
カビが原因で引き起こされるアレルギーには、以下のようなものがあります。
- 気管支喘息
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- 気管支喘息の原因はさまざまだが、特にダニが原因となることが多い
- アレルゲンがよくわからない場合、「アルテルナリア」という黒カビが原因となることも
- アルテルナリアは湿気の多い浴室や台所、押入れなどに存在することが多い
- ゼイゼイ、ヒューヒューと音が聞こえる「喘鳴」が特徴で、咳・息切れ・呼吸困難等の症状が出ることがある
- 夏型過敏性肺炎
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- 肺炎は冬に多いイメージがあるが、夏型過敏性肺炎は名前通り夏に多い
- 通常の肺炎とは異なり、ホコリに紛れている「トリコスポロン」というカビによって起こる
- 風邪と症状が似ていて見過ごされやすいが、治ったと思っても次の夏にまた発症するという特徴がある
- 日当たりや風通しが悪い場所で発生しやすいカビで、毎年夏の終わり頃に発熱や咳が起こるという場合はこのアレルギーを疑うと良い
- 慢性化すると肺が萎縮し、呼吸困難や呼吸不全を引き起こすことも
- アレルギー性結膜炎
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- 花粉や住宅内にあるホコリなどのハウスダストが原因になって起こる、目のアレルギー。カビが原因になることもある
- 花粉は季節性のものだが、ホコリやカビなどのハウスダストは一年中屋内に存在するため、いつ発症してもおかしくない
- 目やまぶたがかゆくなり、白目の部分が充血して目やにが出るのが特徴
- かかってしまったら擦ったりせず、早めに眼科に行って抗生物質をもらうことが重要
- アレルギー性鼻炎
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- アレルギー性鼻炎の原因はさまざまだが、ススカビ(アルテルナリア)が関係しているとされる
- アルテルナリアの粒子は大きく、鼻の中に入って粘膜につくと過剰反応であるアレルギー反応が起こる
- くしゃみ・鼻水・鼻詰まりが主な症状
「夏型過敏性肺炎」は、エアコンや加湿器などの内部にはえてしまったカビから胞子が撒き散らされて起こるケースが多く知られています。無症状の場合もありますが、咳・発熱など風邪の初期症状に似た症状が出ることもあり、風邪がなかなか治らないと病院に行って初めて肺炎に気づくことも少なくありません。
カビが引き起こす中毒にはどんなものがあるの?
カビが引き起こす中毒としては食中毒が有名ですが、カビが原因で引き起こされる癌もあります。
- 食中毒
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- ほとんどの食中毒の原因は細菌とウイルスだが、まれにカビ毒で食中毒が起こることも
- カビがはえた表面を削っても、目に見えない菌糸が残っている場合がほとんどなので、カビが一度でもはえた食品は食べないようにする
- がん
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- がんは生活習慣病の一つとされるが、カビが原因でがんになることも
- WHOによる発がん性評価で最高レベルの危険度とされているのが「アフラトキシン」というカビ毒
- トウモロコシなどの穀類や落花生などのナッツ類に多いため、古くなったものや変色したものは食べないよう気をつける
- 一度に大量摂取すると肝障害を引き起こすこともあるが、少量を一時的に摂取しただけではただちに人体に有害となるわけではない
- 長期間に渡って何度も摂取し続けた場合、体内にカビ毒が蓄積し、肝臓がんの原因となることがある
青カビなどを食べて引き起こされる食中毒は非常に馴染みの深いものでしょう。しかし、馴染み深いとは言っても、赤カビなどの強力なカビ毒で食中毒が起きると、非常に重篤な症状が引き起こされることもあります。また、中には長期的に摂取し続けると癌を引き起こすカビ毒もありますので、できるだけ摂取しないよう、十分に気をつけましょう。
おわりに:家にはえるカビは、主に黒・赤・青・緑・黄・白の6種類
家にはえるカビは、色で言うと6種類があり、どこにでもいる馴染み深い黒カビや青カビから、植物を病気にしてしまう赤カビ、木材を劣化・腐敗させる緑カビ、乾燥を好む黄カビ、ふわふわとした白カビなどです。
一部の青カビなど、人間に有益なカビもありますが、多くのカビは健康被害を引き起こします。中には癌を引き起こすカビもありますので、カビがはえたり変色したりしたものを食べないよう気をつけましょう。
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